約 3,318,010 件
https://w.atwiki.jp/dominions3/pages/1212.html
The Black Book of Secrets 死と血の複合ブースター。明らかにヤバそうな雰囲気なのにヤバいお方は来ない The Black Book of Secrets その他 研究Lv 属性 属性2 内部ID 291 8 2 2 威力 攻撃補正 攻撃回数 長さ 防御力 防御補正 回避率 重さ 射程 弾数 特殊 その他 死魔法ブースト:1、血魔法ブースト:1Fear効果:5 ゲーム内解説文 This ancient book is infused with power and can be a great help when using Death and Blood magic. The secrets contained in this book also emit a strong aura of fear. 和訳 この古代の書物は力を吹き込まれており、死と血の魔法を使う際に大きな助けとなり得ます。この書物に記される秘密は、強い恐怖のオーラを発します。 注記 アーティファクト書物シリーズの1つ。正に禁書といった雰囲気の品で、血の魔法も絡んでいるが、そのわりにHorrorに目を付けられることはない。 これは死と血の複合ブースターとして機能してくれる。総じて高価な血魔法単独ブースターと比べ非常に安く、それらへの踏み台として実に有益。またFear能力の付加もついており、死魔法のFearボーナスを活かし易い。 とくに目立つ欠点も無いので、素直にブースターとして活かせば問題ないだろう。Fearのおまけは接近戦を挑まないと意味が無いが、少なくとも害にもならない。 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2580.html
Report.20 長門有希の憂鬱 その9 ~朝倉涼子の抵抗~ それから数日後。 朝倉涼子の辞令が内示された。正式な交付は任務引き継ぎ完了後。 ――長門有希任務代行解除 朝倉涼子 ――有機情報連結解除を命じる。 その週の金曜日。 朝のHRで、涼子が再びカナダに戻ることが発表された。クラスはどよめきに包まれた。涼子は、当初の予定通り日本での用事が済んだので、カナダに戻ることを説明した。つまり、そのような理由で姿を消すという設定。本当は、涼宮ハルヒの事後処置状況を見極めた上で、問題ないと情報統合思念体が判断したため。 涼子はその日の授業がすべて終了すると、帰りのHRで別れの挨拶を行った。挨拶を終えると、またいつでも日本に戻ってきて、顔を見せてほしいと級友達に声を掛けられた。 そしてハルヒは、こう宣言した。 「あんたは今日から我がSOS団の海外特派員や! 北米地域での不思議探索は任せたで!」 【あんたは今日から我がSOS団の海外特派員よ! 北米地域での不思議探索は任せたわ!】 団員ではない涼子を勝手に海外特派員に任命するあたり、実にハルヒらしい行動と言える。 こうして涼子は、クラスの誰からも、そして教師達からも惜しまれながら、北高を後にした。 恐らくはもう二度と足を踏み入れることはない、その場所を。 明けて土曜日、708号室にて。 「明日一日くらいは、余裕あるよね?」 涼子がわたしに言ってきた。任務の引き継ぎは、もうあとわずかで終了する。それが終われば涼子は……また有機情報連結が解除される。現状は、その最後の引き継ぎが遅滞していた。わたしも涼子も、未整理の膨大な情報の処理に手間取っていた。 ……嘘だ。本当の理由は分かっている。 引き継ぎを終えたくないのだ、わたしは。そして、多分涼子も。 この情報の引き継ぎを終えることが、最後の別れの時だとお互いに認識している。それが、嫌。 別れたくない。もっと一緒にいたい。 これは、端末にはありえない考え方。でも、わたし、いや、わたし達は、そのように考えている。人間達と共に過ごしたわたし達に芽生えた、人間のような考え方。今の状態を人間の言葉で表せば、『未練』という言葉が該当する。 わたしは言った。 「今のところ、最終期限は設定されていない。」 「せっかくだしさ、二人でお散歩でもしましょうよ。」 その行為に何の意味があるのか、とは問わない。以前のわたしなら問うていただろうが。わたしは黙って首肯した。 その日の夕食は、わたし達が台所で一緒に作ることにした。 「カレー缶は十分にある。」 「ダメよ、レトルト食品ばっかりじゃ。たまにでも良いから、ちゃんと作らなきゃ。」 「…………」 「食べ物に気を遣うのも、人間にとっては重要な行動なんだから。」 爛れた私生活を送るわたしと、それを窘める涼子。 いつの間にか、かつてわたしが暴走して世界を改変した時のような関係になっていた。 「といっても、冷蔵庫にはキャベツしかないのね……どうしたものかしら。」 涼子は顎に手を当てて考え込んでいた。もとよりわたしは、わざわざ食材から料理を作るという生活は送っていない。諦めるべき。 その時、何の前触れもなく玄関のドアが開いた。このようなことができる者は、限られている。 「勝手にお邪魔しますね。お困りかと思いまして。」 喜緑江美里が、両手に買い物袋を提げて入ってきた。 「どうしたの、こんなにたくさん!?」 「夕食の支度を始める時間ですが、長門さんのことだから、食材の買い置きがないだろうと思って、調達してきました。」 二人は手際よく、食材を仕分け始めた。二人とも楽しそうに見える。江美里はこのような性格設定だっただろうか。 「漫画でも、料理は学べるんですよ?」 結局、三人でそれぞれ料理を分担することになった。 「このキャベツを活用しましょう。」 江美里は回鍋肉。 「今炊けてるごはんは、冷凍した方がおいしさ長持ちね。」 涼子は炊飯器を使っておでん。 わたしはカレー…… 『阻止。』 ……これにはわたしも苦笑い……はしない。それにしてもこのインターフェイス達、ノリノリである。 「わたしも手は空いてるし、一緒に何か作りましょ。」 協議の結局、わたしと涼子は、ひじき豆と、わかめともやしのスープを作ることになった。調理開始。 ひじきとわかめを水で戻す。増えていくわかめ。なんとなく江美里の方を見てみた。 「……長門さん? その視線にはどういう意味があるのでしょうか?」 江美里は笑顔を若干引きつらせながら言った。他意はない。ないが。視線が江美里の方向……主に頭部に向かうことを抑制できない。 その時、江美里の手が動いた、ように見えた。情報操…… 「くしゅん!」 間に合わなかった。江美里の手には、胡椒の瓶が握られていた。 「あ~ら~、ごめんあそばせ。おほほほ。」 顔は笑っているが、額に『怒りの四つ角』が出ているのを、わたしは見逃さなかった。 「い~え~、これは下味を付けるためであって、決して他意はございませんことよ。」 「……二人とも食べ物で遊ばないの。」 やれやれといった面持ちで、涼子が窘めた。鼻の穴に丸めたキッチンペーパーを詰めているので、少しも様になっていないが。 「玉葱が目にしみるのには、これが一番手軽で効果的な対策なのよ。」 まな板には微塵切りにされた玉葱の姿が認められた……もはや何も言うまい。 インターフェイス三人娘の、賑やかな台所。 わたしはかつてSOS団の女性陣三人で夜通し、手作りチョコレートケーキを作った時のことを思い出していた。あれは『楽しい』出来事だった。 三人で手際よく調理に勤しむことしばし。 「なかなかの出来栄えじゃない?」 和・洋・中と、この国で食される代表的な分類の料理が食卓に供された。三人揃って、 『いただきます。』 人間に紛れて怪しまれずに生活するために身に付けさせられた、人間風の生活習慣。人間との接触が極度に少ないわたしは、無用なものと考え、早々にしなくなったが、彼女達は続けていたらしい。 「こら、そんな機械的に食べちゃ変でしょ!?」 「ふふふ、そんなに慌てなくても、料理は逃げませんよ。」 妹の世話を焼く、タイプの違う姉二人。人間の目にはそのように見えるだろうか。あの改変世界のわたしの周囲に江美里はいなかったが、もしいたら、今のような光景が展開されていたのかもしれない。 いつもより『美味しい』食事を終え、各自お茶を飲みながら思い思いの格好でくつろぐ。この行為もまた、インターフェイスの行動には何ら影響を及ぼさない。 「だめよ長門さん。そういう些細なところも正確に踏まえないと、正確な観測とは言えないわ。」 「そうですよ。人間達の間で有名な、パーソナルネーム黒澤明という映画監督は、撮影の際は、画面に映らないタンスの中身まで精密に時代考証をして設置するほどの徹底ぶりだったそうですから。」 ……江美里の解説は、的を射ているのかいないのかよく分からない。恐らく、人間である涼宮ハルヒの観測をするのなら、自らも人間と同じ生活をして、人間の行動を体感する必要がある、という趣旨だと認識した。 「そのためには、見えない所まで手を抜かないことが大切なんです。」 横では、涼子が頷いていた。 休憩が終わったら、後片付け。使用した食器を洗浄する。調理器具は、ある有名な料理人のように、調理中にすべて洗浄が完了している。 「それじゃ、わたしはこれで。」 洗い物を済ませると、江美里は帰っていった。帰り際に、 「……ごゆっくり。」 という謎の言葉を残して。 涼子はわたしの部屋に泊まることになった。今までは江美里の部屋で過ごしていたのに。 ………… ……… …… … 翌朝。 どこまでも晴れ渡る空、眩しく差し込む朝日に照らされて、わたしは涼子の腕の中で目を覚ました。 「…………」 また状況に流されてしまった。懲りていない。反省。 一頻り反省した後、周囲の状況を改めて確認してみる。わたしは涼子の腕枕で寝ている状態。お互いに全裸。至近距離に涼子の寝顔がある。しばらく涼子の寝顔を眺める。起きない。 寝顔を眺めていると、あることを思い出した。ハルヒがわたしの寝顔を眺めていて、したこと。わたしは涼子の顔に自分の顔を近付ける。規則正しい寝息。やはり起きない。わたしは実行した。 涼子への口付け。ハルヒが行っていたことをエミュレートしただけ。……他意はない。 だが行為はそこで終わらなかった。突然、わたしの頭が両手で固定された。わたしの口に侵入してくる舌。わたしはすっかり口中を蹂躙されてしまった。 「んふ。おはよう、長門さん。朝から積極的ね。」 小悪魔のような笑顔を浮かべた涼子の顔がそこにあった。 「……ごちそうさま。」 この台詞は、わたしのせめてもの抵抗。無駄な抵抗であることは分かっている。 「きゃー、食べられちゃったー♪ 長門さんのえっちー♪」 この通り、有効打撃にはならなかった。むしろ重いカウンターを食らった気さえする。 このままの体勢でいると、またハルヒの時の二の舞になってしまう。 わたしは無言で布団から出て、下着を身に着けると洗面所に向かった。人間の言葉で言うところの『情事の跡』を消すために。……いわゆる『キスマーク』だけでなく、『歯型』まで付いているのはいかがなものかと思う。 わたしが洗面所から出ると、涼子は台所で朝食を準備していた。裸にエプロンだけを着けて。 「朝ごはんは、昨日の残り物を活用するわね。」 その服装には何の意味があるのだろうか。 「うふふ。これで長門さんを、の・う・さ・つ♪」 そう言って腰をくねらせる涼子。……わたしを何だと思っているのだろうか。 「きゃー、長門さん、鼻血、鼻血ー!」 ……最近、実感したことがある。 すなわち、『身体は正直である』と。 涼子による、『はい、長門さん、あーん。』などの攻撃を受けつつの朝食も終わり、わたし達は出掛けた。 涼子がする取り留めのない話を聞きながら、わたし達はこの街を歩き回った。不思議探索で歩き回った街。そして、わたし達の唯一の……『思い出』と呼べるものがある、この街を。 街を歩きつつ、買い物をするなどして、わたし達はずっと一緒に行動した。こんなに長い時間、涼子と行動を共にしたのは初めて。 とある雑貨屋の前で、涼子が足を止めた。 「長門さんも、アクセサリーとか身に着けた方が良いんじゃない?」 わたしは雑貨屋の窓から見える棚に並ぶ、安いアクセサリー類を眺めながら答えた。 「アクセサリーは校則違反。」 「……別に学校に着けて行けっていう意味じゃなくて。」 「涼宮ハルヒは、わたしがアクセサリーを身に着けた姿を望んでいないと思われる。」 涼子は溜め息をついた。 「分かってないなぁ、長門さんは。普段飾り気のない娘がさりげなくおしゃれしてる姿は、いわゆる一つの『萌え要素』なのに。」 「涼宮ハルヒの中で、『萌え』という概念は朝比奈みくるの担当。」 わたしは素っ気なく答えた。涼子が苦笑する。 「わたしはそうじゃないと思うんだけどな……。ま、いいわ。せっかくだし、覘(のぞ)いていきましょ。」 涼子はわたしの手を握ると、店に入っていった。 店内には様々な商品が陳列されている。客の九割は女性だった。人間の女性は、このような店舗を好む傾向にあると観測資料にはある。しかしわたしは、見た目こそ女性に設定されてはいるが、あくまで観測者。そのような趣向を理解することはできない。 だから、今、目の前で涼子が、 「あーなたーも~♪ わーたしーも~♪ んーんん~♪ んーんーんーんーん~♪」 鼻歌を歌いながら、とても楽しそうに商品を物色している姿もまた理解できない。 「長門さんは、こういうのに興味は……全くないみたいね。」 「素材も造形も、すべてが甘い。端的に表現すれば『安っぽい』。」 「まあ、ここは基本的にそんな高級品を扱うお店じゃないからね。」 「わたしには、これらの商品の価値が理解できない。」 「……雑貨屋に連れてこられた男のコみたいな台詞よ、それ。」 涼子は苦笑しつつも、一人で店内を隈なく歩き回った。 やがて店内をすべて見終わった涼子が、ある一角で手を振りながらわたしを呼んだ。 「長門さん、ちょぉこっち来てー。長門さんにぴったりのモノ、見付けたでー。」 【長門さん、ちょっとこっち来てー。長門さんにぴったりのもの、見付けたわー。】 実に嬉しそうに手招きする涼子の元へ向かう。そこは主に文房具を陳列してある場所だった。 「ほら、これ。」 涼子の指差す方を見る。そこには『ブックマーカー』、つまり『栞』が並べられていた。 「長門さんは、大の読書好きだもんね。だから、こういうのはどうかなと思って。」 「栞なら、書籍を購入すれば付いてくる。」 「そういう味も素っ気もないものじゃなくて、ずっと使い続けるようなものよ。」 「栞を使用する機会は滅多にない。」 『彼』にメッセージを伝える時ぐらい。 「……まあ、あの読む速度じゃ、読みかけになることは滅多にないでしょうね。」 涼子は栞を物色しながら、 「でも、人間の行動原理は、単なる実用性以外の部分にも、大切な要素があるのよ。例えば……ほら。」 そう言って、ある栞を手にとってわたしに見せた。 「透明な容器に金魚や蛙の形をした物が入ってて、透明な液体で満たされてるの。傾けると、ほら、こういうふうに、中の物がまるで泳いでるようにゆっくり動くのよ。面白いでしょ?」 「ユニーク。」 「それとか、ほら、これなんか、クリップ型なんだけど、掌の形をしてるのよ。それで、実際に本に挟むと、こう、まるでページを手で押さえてるように見えるの。」 他にも、どこかの美術館が建築物の意匠を再現したものや、宝石やベネチアングラスで装飾した華麗なもの、遊ぶ子供をデフォルメした形、着物の布地を使ったものなど、意匠も素材も様々な栞が並んでいる。 「確かに『ページを示す』という目的を果たすだけなら、買った時に付いてくる栞や付箋とか、極端な話、それこそいらない紙の切れ端でも良いわけよ。何だったら、ページの端を少し折り曲げても良いんだし。」 『ドッグイヤー』や『キャットイヤー』と呼称される方法。 「でも、人間はそれを良しとはしなかった。」 様々な工夫を凝らした栞が現にここにある。これでも、この地上に存在する様々な栞の、ごく一部なのだろう。 わたしは楽譜を模った栞を手に取りながら、涼子の話を聞いていた。 「目的達成には関係しない、端的に表現すれば『無駄』な部分。無駄であるにも関わらず、人間はしばしばこのような部分を重視し、わたし達では考えられないほど熱心に、工夫することに情熱を傾けることがある。こういうのを、人間は『ゆとり』とか『遊び心』と表現するわ。」 涼子は遠い目をした。 「……わたし達は、これを『ノイズ』として処理するんだけどね。」 ノイズ。 わたし達にとってそれは、不要なもの、目的達成のための障害として認識される。 しかし、人間は違う。人間はそれを、好意的に捉える。その充実に情熱を注ぐ。 もしかしたら、そのような『空き領域』……『マージン』の存在が、人間を人間たらしめる要素なのかもしれない。 「そんな人間の遊び心を知ってもらうために、長門さんには、こういうものにも触れてほしかった。」 そう言って涼子は、 「だから、わたしはこれを長門さんに贈ろうと思うの。」 と、わたしにある栞を示した。それは紐を主体とした栞で、紐の両端に小さな『本』と『眼鏡』を模った飾りが付いていた。その『本』は革の表紙が再現されており、その『眼鏡』にはプラスチック製のレンズが入っていた。どちらの飾りも、かなり精巧に作られている。人間の言葉で言うと、『いい仕事』をしている。 「本に挟む栞が、本と眼鏡なの。ユニークでしょ?」 わたしは肯いた。確かにユニーク。 「気に入ってもらえたかしら。でもね、これを選んだ理由は、それだけじゃないのよ。」 涼子はわたしに向き合うと、わたしの顔に両手を添えて、わたしの顔をじっと見つめながら言った。 「これが、『わたしが見ていた頃』の長門さんの姿を象徴するもの。」 ハッとした。 わたしが眼鏡を掛けなくなったのは、正に涼子が消滅した時のこと。 涼子の有機情報連結を解除した後、わたしは教室の物品を再構成して、空間封鎖を解除した。しかし、戦闘のダメージが残っていたのだろう。わたしは、戦闘によって亡失した眼鏡の再構成を忘れた。すぐに気が付き再構成しようとしたが、結局再構成はしなかった。なぜなら、『彼』が「眼鏡がない方が良い」と言ったから。 そう。 わたしが眼鏡を掛けなくなった直接のきっかけは、『彼』の言葉。でも、その『彼』がその言葉を口にした出来事のそもそもの発端は、わたしと涼子との戦闘だった。『彼』を殺害し、涼宮ハルヒの出方を見る、という涼子と、『彼』を保護し、涼宮ハルヒの環境を守る、というわたしとの。 そして涼子は、それ以降わたしの姿、すなわち眼鏡を掛けていない姿を見ていない。 戦闘中に眼鏡を失った時、わたしは涼子に背を向けていた。そしてあの改変世界でも、わたしは眼鏡を掛けていた。 もし涼子が、眼鏡を掛けていないわたしの姿を見ていたとすれば、それはわたしが涼子の有機情報連結を解除する時以外にない。 ……人間の言葉で言えば、眼鏡を掛けていないわたしの姿は、わたしが涼子を『殺す』瞬間の姿。涼子にとって、最期に見た光景。 「わたしの中では、普段の長門さんは眼鏡を掛けた姿だった。だから、わたしが再構成され、そして長門さんも再構成されて再会した時、長門さんが眼鏡を掛けてない姿を見て少し……そう、『感慨深かった』。もちろん、情報として事前に知ってはいたわ。でもね、やっぱり他所から伝えられる情報と、実際に自分の目で見て経験する現実とは違う。」 涼子にとって、眼鏡を掛けていないわたしは戦闘状態、それも涼子を『消す』時の姿。 わたしは、ふと思った。そんなわたしの姿を、今まで涼子はどんな思いで見ていたのだろうか、と。 「…………」 涼子はわたしの顔を、慈しむように撫で回していたが、名残惜しそうに手を離した。そして本と眼鏡の栞を二つ手に取ると、レジに持って行った。 「両方ともプレゼント包装、お願いします。」 涼子は、わたしと涼子の分、二つの栞を購入した。 雑貨屋を出ると、涼子は今買ったばかりの栞を一つ、わたしに手渡した。 「二人でお揃いね。」 ――もう、二つ買っても意味がないのに―― この言葉は言えなかった。言いたくなかったから。 その後もあちこち散策したわたし達は、海辺に来ていた。 「今になって思うの。わたしは、何だかんだ言って、『人間』としての生活を楽しんでたんだなって。」 既に日没を迎え、辺りは夜の帳(とばり)が下り始めている。 「知ってた? ここって、夜景のきれいな場所なのよ。」 西宮大橋。 歩道には展望スペースとベンチが設けられていて、夜景を楽しむ設備が整っている。 「本格的な夜景も良いけど、わたしはこの日没後すぐ、まだ明るさが残ってて照明も点いてる、そういう時間帯の景色が好きなの。昼でもなく、夜でもない、昼と夜の狭間……」 涼子はわたしに向き合い、言葉を続けた。 「人間でも人形でもない、生物と機械の狭間……今のわたし達みたいだと思わない?」 ドキリとした。 『驚く』という行為自体、端末としてはおかしな動作の部類に入るが、わたしは驚いた。こんなにも的確に、わたしが考えていることを指摘されたこと。そして、『わたし達』と言われたこと。 つまり、涼子もまた、わたしと同じ考えであるということ。 「…………」 わたしは沈黙した。言葉を発しないのは普段通り。それだけではなく、通信でも沈黙した。 「ふふ、驚いてるみたいね。まあ、無理もないけど。」 涼子はわたしから視線を外し、夜景の方を向いた。 「わたしはね、人間で言えばたった三歳。なのに、もう『死』を経験してる。」 涼子の意識の上では何回になるか分からないが、いずれにしても『死』に至らしめたのはわたし。 「人間の三歳って、ちょうど『第一反抗期』に当たるんですって。つまり、『自我』が芽生える時期ってこと。自我が芽生えて、親の言うことに反発したくなる年頃。」 涼子はニヤリと笑った。 「あの冬。長門さんが『コト』を起こした頃も、やっぱり三歳ぐらいよね。」 涼子の意識の上でも、あの事件はあったことになっているのか。だがそれよりも。 「何が言いたいの。」 涼子は満面の笑みで言い放った。 「つまり、あなたもわたしも、反抗期にすることがあるっていうこと。」 反抗期の行動……『親』への反抗。わたしは、『親』を『殺し』た。情報統合思念体の存在を一時的にとはいえ、消滅させた。 「わたしは対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。生きる自由も、死ぬ自由さえも与えられてはいない。生殺与奪の権限は、情報統合思念体が握っている。」 涼子は胸の前で両手を組んだ。それは人間のする『祈り』の姿に似ていた。 「それでも、わたしは反抗してみたい。せめて消え方くらい、自分で選んでみたい。」 何を言っているのか理解できない。 「わたしは、インターフェイスとして消滅するんじゃなく、ヒトとして死んでやるの。」 分からない。理解不能。エラー。 「何でもかんでも情報統合思念体の意のままっていうのは、もうまっぴらなのよ。」 「……何を、言っているの。」 「これはわたしの……ささやかな、『反抗』。」 そう言うと涼子は、欄干に飛び乗った。 わたしは身動きが取れないでいた。どうして良いか分からなかったから。 「……さすがに感付かれたか。」 涼子の視線を追って振り返ると、江美里がいた。 「また独断専行ですか? いい加減にしてほしいですね。」 江美里は微笑を浮かべたまま。涼子も笑顔のまま応じる。 「見逃しては……もらえなさそうね。」 「ええ、それはできない相談ですね。」 なぜなら、と江美里は背筋を伸ばし、手を後ろに組んで宣言した。 「『抵抗する場合は強制的に当該対象の有機情報連結を解除せよ』と言い渡されていますから。」 「なるほど。『抜け忍』の抹殺命令自体は想定の範囲内だけど、まさか穏健派のあなたが実行役とはね。」 「今のわたしは、長門さんのいわば『お目付け役』。ですから、長門さんの任務代行であるあなたに対しても、当然に監督権限は及ぶと解されます。それに長門さんには……『荷が重い』でしょうしね。」 「情報統合思念体も、少しはヒトの心の機微が分かるようになったんだ。感心感心。……できればもうちょっと早く、それぐらいは成長してほしかったんだけどな。」 涼子は眉尻を下げて嘆息した。 「わたしに対しては、未だに扱いが悪いままなのよね。あーあ、やっぱりわたしは『いらない子』だったかぁ。そりゃ確かに意にそぐわない事をしたかもしれないけど、それなりに貢献もしたと思うんだけどな。」 涼子は、やれやれ、と肩をすくめた。 「それじゃあ、ターミネーター喜緑さんに質問。あなたにとって、強制有機情報連結解除を実行するほどの『抵抗』って、定義は何なのかしら。」 「そうですね。端的に言えば、わたしに攻撃することでしょうか。」 涼子はニヤリと、 「ということは、喜緑さん的には、あなたに危害を加えようとしない限り、積極的に強制有機情報連結解除を実行する要件を満たさないと解釈して差し支えないかしら。」 「定義から言うと、そのように解釈して差し支えありません。」 「じゃあさ、例えばの話だけど。ここでわたしが、何か突拍子もないことを始めても、喜緑さんに攻撃しない限り、あなたはそれを邪魔する理由はないということで良いわね?」 「恐らくその場合は、変更命令が下されて、何らかの行動を起こすことになるでしょう。しかし、それでも行動開始までには少し時間が掛かるでしょうけれど。」 「……なるほど。予想通りの回答ありがとう。」 「どういたしまして。」 二人は、何かを確認し合うかのように視線を交わらせた。 「後はよろしく。じゃあね。」 涼子は欄干から一歩踏み出した。 真っ暗な水面目掛けて落ちていく涼子。江美里は動かない。わたしが何とかしなければ。 ……何とか? 一体何をしようというのか。 たとえここで涼子を上に引き上げたとしても、彼女の有機情報連結解除は既定事項。時期が早いか遅いかだけの違いしかない。それでもわたしは何かをしようというのか。何を? 分からない。皆目分からない。 その時、江美里が動いた。 「強制コード受領。 Auto-execution Mode... KILL /ALL SELECT シリアルコード FROM データベース WHERE コードデータ ORDER BY 攻性情報戦闘 HAVING ターミネートモード パーソナルネーム朝倉涼子を反乱分子と判定。当該対象の有機情報連結を解除する。」 『物騒な』コマンドラインスイッチと共に、江美里の口から有機情報連結解除のコードが紡がれる。 その時わたしは、違和感を覚えた。なぜ情報統合思念体は、涼子をここまで目の敵にするのだろうか。所詮は涼子も、情報統合思念体にとっては一端末に過ぎないはず。それはもちろんわたしにも、江美里にも言えること。なのになぜ、涼子だけをこうも執拗に付け狙うのだろうか。 涼子がまた独断専行しようとしていたから? そのような些事、捨て置けば良いはず。たかが一端末に、何ができると言うのか。 確かにわたしは、一端末でありながら、一度は情報統合思念体を消滅させた。でもそれはハルヒの能力を掠め取って利用しただけ。わたし自身の能力ではない。情報統合思念体との接続を断絶してしまえば、たちまち端末は無力化する。なのに、なぜ。 一端末に過ぎないわたしには、情報統合思念体の考えがすべて分かるわけではない。ないが。違和感が拭い去れない。何かが引っ掛かる。 接続を断絶できない理由があった? 断絶して困ること……端末の動向を把握できない? 確かにそう。それはもはや『端末』ではない。……まさか。 涼子が端末でなくなることが困る? 涼子の『変容』を恐れている? ……恐れる? 情報統合思念体が? 一端末を? ありえない。ナンセンス。 「朝倉涼子の有機情報連結の解除を確認。効果空間内、残存反応なし。」 江美里の声が響く。わたしは黙って、暗い水面を見つめていた。そこには何の痕跡も残ってはいなかった。水音こそしたものの、何も浮かんではこない。有機情報連結が解除され、何も残らないのだから当然。 「Mode Release...」 江美里が通常動作に復帰した。 「こういう時、人間は……やはりこうするのでしょうね。」 わたしの後ろに回ると、肩に手を置いた。 「わたしの胸で泣いても良いんですよ?」 そう言って優しく……とても優しく抱き締めてきた。 「わたしにそのような趣味はない。昨夜は状況に流されただけ。勘違いしないで。」 「嘘ばっかり。」 江美里は後ろからわたしの顔に頬を寄せた。 「わたしの頬に感じる、この熱くて冷たい水は何でしょうか。」 それは水じゃなくて、もっと寂しい粒。 「泣いてない。泣いてなどいない。」 「はいはい。」 よしよし、と頭を撫でられる。この感触、嫌いではない。 「わたしも長門さんと同じになりましたね。この手で、同胞である朝倉涼子を……」 江美里がわたしの耳元で囁く。 「でも心配はしてません。あなたも受け取ったのでしょう? 彼女の最期のメッセージを。」 有機情報連結が解除される瞬間、涼子からの通信。 『ここから、わたしの抵抗が始まるの……』 謎の言葉を残して、朝倉涼子は消滅した。 ←Report.19|目次|Report.21→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2671.html
Report.20 長門有希の憂鬱 その9 ~朝倉涼子の抵抗~ それから数日後。 朝倉涼子の辞令が内示された。正式な交付は任務引き継ぎ完了後。 ――長門有希任務代行解除 朝倉涼子 ――有機情報連結解除を命じる。 その週の金曜日。 朝のHRで、涼子が再びカナダに戻ることが発表された。クラスはどよめきに包まれた。涼子は、当初の予定通り日本での用事が済んだので、カナダに戻ることを説明した。つまり、そのような理由で姿を消すという設定。本当は、涼宮ハルヒの事後処置状況を見極めた上で、問題ないと情報統合思念体が判断したため。 涼子はその日の授業がすべて終了すると、帰りのHRで別れの挨拶を行った。挨拶を終えると、またいつでも日本に戻ってきて、顔を見せてほしいと級友達に声を掛けられた。 そしてハルヒは、こう宣言した。 「あんたは今日から我がSOS団の海外特派員や! 北米地域での不思議探索は任せたで!」 【あんたは今日から我がSOS団の海外特派員よ! 北米地域での不思議探索は任せたわ!】 団員ではない涼子を勝手に海外特派員に任命するあたり、実にハルヒらしい行動と言える。 こうして涼子は、クラスの誰からも、そして教師達からも惜しまれながら、北高を後にした。 恐らくはもう二度と足を踏み入れることはない、その場所を。 明けて土曜日、708号室にて。 「明日一日くらいは、余裕あるよね?」 涼子がわたしに言ってきた。任務の引き継ぎは、もうあとわずかで終了する。それが終われば涼子は……また有機情報連結が解除される。現状は、その最後の引き継ぎが遅滞していた。わたしも涼子も、未整理の膨大な情報の処理に手間取っていた。 ……嘘だ。本当の理由は分かっている。 引き継ぎを終えたくないのだ、わたしは。そして、多分涼子も。 この情報の引き継ぎを終えることが、最後の別れの時だとお互いに認識している。それが、嫌。 別れたくない。もっと一緒にいたい。 これは、端末にはありえない考え方。でも、わたし、いや、わたし達は、そのように考えている。人間達と共に過ごしたわたし達に芽生えた、人間のような考え方。今の状態を人間の言葉で表せば、『未練』という言葉が該当する。 わたしは言った。 「今のところ、最終期限は設定されていない。」 「せっかくだしさ、二人でお散歩でもしましょうよ。」 その行為に何の意味があるのか、とは問わない。以前のわたしなら問うていただろうが。わたしは黙って首肯した。 その日の夕食は、わたし達が台所で一緒に作ることにした。 「カレー缶は十分にある。」 「ダメよ、レトルト食品ばっかりじゃ。たまにでも良いから、ちゃんと作らなきゃ。」 「…………」 「食べ物に気を遣うのも、人間にとっては重要な行動なんだから。」 爛れた私生活を送るわたしと、それを窘める涼子。 いつの間にか、かつてわたしが暴走して世界を改変した時のような関係になっていた。 「といっても、冷蔵庫にはキャベツしかないのね……どうしたものかしら。」 涼子は顎に手を当てて考え込んでいた。もとよりわたしは、わざわざ食材から料理を作るという生活は送っていない。諦めるべき。 その時、何の前触れもなく玄関のドアが開いた。このようなことができる者は、限られている。 「勝手にお邪魔しますね。お困りかと思いまして。」 喜緑江美里が、両手に買い物袋を提げて入ってきた。 「どうしたの、こんなにたくさん!?」 「夕食の支度を始める時間ですが、長門さんのことだから、食材の買い置きがないだろうと思って、調達してきました。」 二人は手際よく、食材を仕分け始めた。二人とも楽しそうに見える。江美里はこのような性格設定だっただろうか。 「漫画でも、料理は学べるんですよ?」 結局、三人でそれぞれ料理を分担することになった。 「このキャベツを活用しましょう。」 江美里は回鍋肉。 「今炊けてるごはんは、冷凍した方がおいしさ長持ちね。」 涼子は炊飯器を使っておでん。 わたしはカレー…… 『阻止。』 ……これにはわたしも苦笑い……はしない。それにしてもこのインターフェイス達、ノリノリである。 「わたしも手は空いてるし、一緒に何か作りましょ。」 協議の結局、わたしと涼子は、ひじき豆と、わかめともやしのスープを作ることになった。調理開始。 ひじきとわかめを水で戻す。増えていくわかめ。なんとなく江美里の方を見てみた。 「……長門さん? その視線にはどういう意味があるのでしょうか?」 江美里は笑顔を若干引きつらせながら言った。他意はない。ないが。視線が江美里の方向……主に頭部に向かうことを抑制できない。 その時、江美里の手が動いた、ように見えた。情報操…… 「くしゅん!」 間に合わなかった。江美里の手には、胡椒の瓶が握られていた。 「あ~ら~、ごめんあそばせ。おほほほ。」 顔は笑っているが、額に『怒りの四つ角』が出ているのを、わたしは見逃さなかった。 「い~え~、これは下味を付けるためであって、決して他意はございませんことよ。」 「……二人とも食べ物で遊ばないの。」 やれやれといった面持ちで、涼子が窘めた。鼻の穴に丸めたキッチンペーパーを詰めているので、少しも様になっていないが。 「玉葱が目にしみるのには、これが一番手軽で効果的な対策なのよ。」 まな板には微塵切りにされた玉葱の姿が認められた……もはや何も言うまい。 インターフェイス三人娘の、賑やかな台所。 わたしはかつてSOS団の女性陣三人で夜通し、手作りチョコレートケーキを作った時のことを思い出していた。あれは『楽しい』出来事だった。 三人で手際よく調理に勤しむことしばし。 「なかなかの出来栄えじゃない?」 和・洋・中と、この国で食される代表的な分類の料理が食卓に供された。三人揃って、 『いただきます。』 人間に紛れて怪しまれずに生活するために身に付けさせられた、人間風の生活習慣。人間との接触が極度に少ないわたしは、無用なものと考え、早々にしなくなったが、彼女達は続けていたらしい。 「こら、そんな機械的に食べちゃ変でしょ!?」 「ふふふ、そんなに慌てなくても、料理は逃げませんよ。」 妹の世話を焼く、タイプの違う姉二人。人間の目にはそのように見えるだろうか。あの改変世界のわたしの周囲に江美里はいなかったが、もしいたら、今のような光景が展開されていたのかもしれない。 いつもより『美味しい』食事を終え、各自お茶を飲みながら思い思いの格好でくつろぐ。この行為もまた、インターフェイスの行動には何ら影響を及ぼさない。 「だめよ長門さん。そういう些細なところも正確に踏まえないと、正確な観測とは言えないわ。」 「そうですよ。人間達の間で有名な、パーソナルネーム黒澤明という映画監督は、撮影の際は、画面に映らないタンスの中身まで精密に時代考証をして設置するほどの徹底ぶりだったそうですから。」 ……江美里の解説は、的を射ているのかいないのかよく分からない。恐らく、人間である涼宮ハルヒの観測をするのなら、自らも人間と同じ生活をして、人間の行動を体感する必要がある、という趣旨だと認識した。 「そのためには、見えない所まで手を抜かないことが大切なんです。」 横では、涼子が頷いていた。 休憩が終わったら、後片付け。使用した食器を洗浄する。調理器具は、ある有名な料理人のように、調理中にすべて洗浄が完了している。 「それじゃ、わたしはこれで。」 洗い物を済ませると、江美里は帰っていった。帰り際に、 「……ごゆっくり。」 という謎の言葉を残して。 涼子はわたしの部屋に泊まることになった。今までは江美里の部屋で過ごしていたのに。 ………… ……… …… … 翌朝。 どこまでも晴れ渡る空、眩しく差し込む朝日に照らされて、わたしは涼子の腕の中で目を覚ました。 「…………」 また状況に流されてしまった。懲りていない。反省。 一頻り反省した後、周囲の状況を改めて確認してみる。わたしは涼子の腕枕で寝ている状態。お互いに全裸。至近距離に涼子の寝顔がある。しばらく涼子の寝顔を眺める。起きない。 寝顔を眺めていると、あることを思い出した。ハルヒがわたしの寝顔を眺めていて、したこと。わたしは涼子の顔に自分の顔を近付ける。規則正しい寝息。やはり起きない。わたしは実行した。 涼子への口付け。ハルヒが行っていたことをエミュレートしただけ。……他意はない。 だが行為はそこで終わらなかった。突然、わたしの頭が両手で固定された。わたしの口に侵入してくる舌。わたしはすっかり口中を蹂躙されてしまった。 「んふ。おはよう、長門さん。朝から積極的ね。」 小悪魔のような笑顔を浮かべた涼子の顔がそこにあった。 「……ごちそうさま。」 この台詞は、わたしのせめてもの抵抗。無駄な抵抗であることは分かっている。 「きゃー、食べられちゃったー♪ 長門さんのえっちー♪」 この通り、有効打撃にはならなかった。むしろ重いカウンターを食らった気さえする。 このままの体勢でいると、またハルヒの時の二の舞になってしまう。 わたしは無言で布団から出て、下着を身に着けると洗面所に向かった。人間の言葉で言うところの『情事の跡』を消すために。……いわゆる『キスマーク』だけでなく、『歯型』まで付いているのはいかがなものかと思う。 わたしが洗面所から出ると、涼子は台所で朝食を準備していた。裸にエプロンだけを着けて。 「朝ごはんは、昨日の残り物を活用するわね。」 その服装には何の意味があるのだろうか。 「うふふ。これで長門さんを、の・う・さ・つ♪」 そう言って腰をくねらせる涼子。……わたしを何だと思っているのだろうか。 「きゃー、長門さん、鼻血、鼻血ー!」 ……最近、実感したことがある。 すなわち、『身体は正直である』と。 涼子による、『はい、長門さん、あーん。』などの攻撃を受けつつの朝食も終わり、わたし達は出掛けた。 涼子がする取り留めのない話を聞きながら、わたし達はこの街を歩き回った。不思議探索で歩き回った街。そして、わたし達の唯一の……『思い出』と呼べるものがある、この街を。 街を歩きつつ、買い物をするなどして、わたし達はずっと一緒に行動した。こんなに長い時間、涼子と行動を共にしたのは初めて。 とある雑貨屋の前で、涼子が足を止めた。 「長門さんも、アクセサリーとか身に着けた方が良いんじゃない?」 わたしは雑貨屋の窓から見える棚に並ぶ、安いアクセサリー類を眺めながら答えた。 「アクセサリーは校則違反。」 「……別に学校に着けて行けっていう意味じゃなくて。」 「涼宮ハルヒは、わたしがアクセサリーを身に着けた姿を望んでいないと思われる。」 涼子は溜め息をついた。 「分かってないなぁ、長門さんは。普段飾り気のない娘がさりげなくおしゃれしてる姿は、いわゆる一つの『萌え要素』なのに。」 「涼宮ハルヒの中で、『萌え』という概念は朝比奈みくるの担当。」 わたしは素っ気なく答えた。涼子が苦笑する。 「わたしはそうじゃないと思うんだけどな……。ま、いいわ。せっかくだし、覘(のぞ)いていきましょ。」 涼子はわたしの手を握ると、店に入っていった。 店内には様々な商品が陳列されている。客の九割は女性だった。人間の女性は、このような店舗を好む傾向にあると観測資料にはある。しかしわたしは、見た目こそ女性に設定されてはいるが、あくまで観測者。そのような趣向を理解することはできない。 だから、今、目の前で涼子が、 「あーなたーも~♪ わーたしーも~♪ んーんん~♪ んーんーんーんーん~♪」 鼻歌を歌いながら、とても楽しそうに商品を物色している姿もまた理解できない。 「長門さんは、こういうのに興味は……全くないみたいね。」 「素材も造形も、すべてが甘い。端的に表現すれば『安っぽい』。」 「まあ、ここは基本的にそんな高級品を扱うお店じゃないからね。」 「わたしには、これらの商品の価値が理解できない。」 「……雑貨屋に連れてこられた男のコみたいな台詞よ、それ。」 涼子は苦笑しつつも、一人で店内を隈なく歩き回った。 やがて店内をすべて見終わった涼子が、ある一角で手を振りながらわたしを呼んだ。 「長門さん、ちょぉこっち来てー。長門さんにぴったりのモノ、見付けたでー。」 【長門さん、ちょっとこっち来てー。長門さんにぴったりのもの、見付けたわー。】 実に嬉しそうに手招きする涼子の元へ向かう。そこは主に文房具を陳列してある場所だった。 「ほら、これ。」 涼子の指差す方を見る。そこには『ブックマーカー』、つまり『栞』が並べられていた。 「長門さんは、大の読書好きだもんね。だから、こういうのはどうかなと思って。」 「栞なら、書籍を購入すれば付いてくる。」 「そういう味も素っ気もないものじゃなくて、ずっと使い続けるようなものよ。」 「栞を使用する機会は滅多にない。」 『彼』にメッセージを伝える時ぐらい。 「……まあ、あの読む速度じゃ、読みかけになることは滅多にないでしょうね。」 涼子は栞を物色しながら、 「でも、人間の行動原理は、単なる実用性以外の部分にも、大切な要素があるのよ。例えば……ほら。」 そう言って、ある栞を手にとってわたしに見せた。 「透明な容器に金魚や蛙の形をした物が入ってて、透明な液体で満たされてるの。傾けると、ほら、こういうふうに、中の物がまるで泳いでるようにゆっくり動くのよ。面白いでしょ?」 「ユニーク。」 「それとか、ほら、これなんか、クリップ型なんだけど、掌の形をしてるのよ。それで、実際に本に挟むと、こう、まるでページを手で押さえてるように見えるの。」 他にも、どこかの美術館が建築物の意匠を再現したものや、宝石やベネチアングラスで装飾した華麗なもの、遊ぶ子供をデフォルメした形、着物の布地を使ったものなど、意匠も素材も様々な栞が並んでいる。 「確かに『ページを示す』という目的を果たすだけなら、買った時に付いてくる栞や付箋とか、極端な話、それこそいらない紙の切れ端でも良いわけよ。何だったら、ページの端を少し折り曲げても良いんだし。」 『ドッグイヤー』や『キャットイヤー』と呼称される方法。 「でも、人間はそれを良しとはしなかった。」 様々な工夫を凝らした栞が現にここにある。これでも、この地上に存在する様々な栞の、ごく一部なのだろう。 わたしは楽譜を模った栞を手に取りながら、涼子の話を聞いていた。 「目的達成には関係しない、端的に表現すれば『無駄』な部分。無駄であるにも関わらず、人間はしばしばこのような部分を重視し、わたし達では考えられないほど熱心に、工夫することに情熱を傾けることがある。こういうのを、人間は『ゆとり』とか『遊び心』と表現するわ。」 涼子は遠い目をした。 「……わたし達は、これを『ノイズ』として処理するんだけどね。」 ノイズ。 わたし達にとってそれは、不要なもの、目的達成のための障害として認識される。 しかし、人間は違う。人間はそれを、好意的に捉える。その充実に情熱を注ぐ。 もしかしたら、そのような『空き領域』……『マージン』の存在が、人間を人間たらしめる要素なのかもしれない。 「そんな人間の遊び心を知ってもらうために、長門さんには、こういうものにも触れてほしかった。」 そう言って涼子は、 「だから、わたしはこれを長門さんに贈ろうと思うの。」 と、わたしにある栞を示した。それは紐を主体とした栞で、紐の両端に小さな『本』と『眼鏡』を模った飾りが付いていた。その『本』は革の表紙が再現されており、その『眼鏡』にはプラスチック製のレンズが入っていた。どちらの飾りも、かなり精巧に作られている。人間の言葉で言うと、『いい仕事』をしている。 「本に挟む栞が、本と眼鏡なの。ユニークでしょ?」 わたしは肯いた。確かにユニーク。 「気に入ってもらえたかしら。でもね、これを選んだ理由は、それだけじゃないのよ。」 涼子はわたしに向き合うと、わたしの顔に両手を添えて、わたしの顔をじっと見つめながら言った。 「これが、『わたしが見ていた頃』の長門さんの姿を象徴するもの。」 ハッとした。 わたしが眼鏡を掛けなくなったのは、正に涼子が消滅した時のこと。 涼子の有機情報連結を解除した後、わたしは教室の物品を再構成して、空間封鎖を解除した。しかし、戦闘のダメージが残っていたのだろう。わたしは、戦闘によって亡失した眼鏡の再構成を忘れた。すぐに気が付き再構成しようとしたが、結局再構成はしなかった。なぜなら、『彼』が「眼鏡がない方が良い」と言ったから。 そう。 わたしが眼鏡を掛けなくなった直接のきっかけは、『彼』の言葉。でも、その『彼』がその言葉を口にした出来事のそもそもの発端は、わたしと涼子との戦闘だった。『彼』を殺害し、涼宮ハルヒの出方を見る、という涼子と、『彼』を保護し、涼宮ハルヒの環境を守る、というわたしとの。 そして涼子は、それ以降わたしの姿、すなわち眼鏡を掛けていない姿を見ていない。 戦闘中に眼鏡を失った時、わたしは涼子に背を向けていた。そしてあの改変世界でも、わたしは眼鏡を掛けていた。 もし涼子が、眼鏡を掛けていないわたしの姿を見ていたとすれば、それはわたしが涼子の有機情報連結を解除する時以外にない。 ……人間の言葉で言えば、眼鏡を掛けていないわたしの姿は、わたしが涼子を『殺す』瞬間の姿。涼子にとって、最期に見た光景。 「わたしの中では、普段の長門さんは眼鏡を掛けた姿だった。だから、わたしが再構成され、そして長門さんも再構成されて再会した時、長門さんが眼鏡を掛けてない姿を見て少し……そう、『感慨深かった』。もちろん、情報として事前に知ってはいたわ。でもね、やっぱり他所から伝えられる情報と、実際に自分の目で見て経験する現実とは違う。」 涼子にとって、眼鏡を掛けていないわたしは戦闘状態、それも涼子を『消す』時の姿。 わたしは、ふと思った。そんなわたしの姿を、今まで涼子はどんな思いで見ていたのだろうか、と。 「…………」 涼子はわたしの顔を、慈しむように撫で回していたが、名残惜しそうに手を離した。そして本と眼鏡の栞を二つ手に取ると、レジに持って行った。 「両方ともプレゼント包装、お願いします。」 涼子は、わたしと涼子の分、二つの栞を購入した。 雑貨屋を出ると、涼子は今買ったばかりの栞を一つ、わたしに手渡した。 「二人でお揃いね。」 ――もう、二つ買っても意味がないのに―― この言葉は言えなかった。言いたくなかったから。 その後もあちこち散策したわたし達は、海辺に来ていた。 「今になって思うの。わたしは、何だかんだ言って、『人間』としての生活を楽しんでたんだなって。」 既に日没を迎え、辺りは夜の帳(とばり)が下り始めている。 「知ってた? ここって、夜景のきれいな場所なのよ。」 西宮大橋。 歩道には展望スペースとベンチが設けられていて、夜景を楽しむ設備が整っている。 「本格的な夜景も良いけど、わたしはこの日没後すぐ、まだ明るさが残ってて照明も点いてる、そういう時間帯の景色が好きなの。昼でもなく、夜でもない、昼と夜の狭間……」 涼子はわたしに向き合い、言葉を続けた。 「人間でも人形でもない、生物と機械の狭間……今のわたし達みたいだと思わない?」 ドキリとした。 『驚く』という行為自体、端末としてはおかしな動作の部類に入るが、わたしは驚いた。こんなにも的確に、わたしが考えていることを指摘されたこと。そして、『わたし達』と言われたこと。 つまり、涼子もまた、わたしと同じ考えであるということ。 「…………」 わたしは沈黙した。言葉を発しないのは普段通り。それだけではなく、通信でも沈黙した。 「ふふ、驚いてるみたいね。まあ、無理もないけど。」 涼子はわたしから視線を外し、夜景の方を向いた。 「わたしはね、人間で言えばたった三歳。なのに、もう『死』を経験してる。」 涼子の意識の上では何回になるか分からないが、いずれにしても『死』に至らしめたのはわたし。 「人間の三歳って、ちょうど『第一反抗期』に当たるんですって。つまり、『自我』が芽生える時期ってこと。自我が芽生えて、親の言うことに反発したくなる年頃。」 涼子はニヤリと笑った。 「あの冬。長門さんが『コト』を起こした頃も、やっぱり三歳ぐらいよね。」 涼子の意識の上でも、あの事件はあったことになっているのか。だがそれよりも。 「何が言いたいの。」 涼子は満面の笑みで言い放った。 「つまり、あなたもわたしも、反抗期にすることがあるっていうこと。」 反抗期の行動……『親』への反抗。わたしは、『親』を『殺し』た。情報統合思念体の存在を一時的にとはいえ、消滅させた。 「わたしは対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。生きる自由も、死ぬ自由さえも与えられてはいない。生殺与奪の権限は、情報統合思念体が握っている。」 涼子は胸の前で両手を組んだ。それは人間のする『祈り』の姿に似ていた。 「それでも、わたしは反抗してみたい。せめて消え方くらい、自分で選んでみたい。」 何を言っているのか理解できない。 「わたしは、インターフェイスとして消滅するんじゃなく、ヒトとして死んでやるの。」 分からない。理解不能。エラー。 「何でもかんでも情報統合思念体の意のままっていうのは、もうまっぴらなのよ。」 「……何を、言っているの。」 「これはわたしの……ささやかな、『反抗』。」 そう言うと涼子は、欄干に飛び乗った。 わたしは身動きが取れないでいた。どうして良いか分からなかったから。 「……さすがに感付かれたか。」 涼子の視線を追って振り返ると、江美里がいた。 「また独断専行ですか? いい加減にしてほしいですね。」 江美里は微笑を浮かべたまま。涼子も笑顔のまま応じる。 「見逃しては……もらえなさそうね。」 「ええ、それはできない相談ですね。」 なぜなら、と江美里は背筋を伸ばし、手を後ろに組んで宣言した。 「『抵抗する場合は強制的に当該対象の有機情報連結を解除せよ』と言い渡されていますから。」 「なるほど。『抜け忍』の抹殺命令自体は想定の範囲内だけど、まさか穏健派のあなたが実行役とはね。」 「今のわたしは、長門さんのいわば『お目付け役』。ですから、長門さんの任務代行であるあなたに対しても、当然に監督権限は及ぶと解されます。それに長門さんには……『荷が重い』でしょうしね。」 「情報統合思念体も、少しはヒトの心の機微が分かるようになったんだ。感心感心。……できればもうちょっと早く、それぐらいは成長してほしかったんだけどな。」 涼子は眉尻を下げて嘆息した。 「わたしに対しては、未だに扱いが悪いままなのよね。あーあ、やっぱりわたしは『いらない子』だったかぁ。そりゃ確かに意にそぐわない事をしたかもしれないけど、それなりに貢献もしたと思うんだけどな。」 涼子は、やれやれ、と肩をすくめた。 「それじゃあ、ターミネーター喜緑さんに質問。あなたにとって、強制有機情報連結解除を実行するほどの『抵抗』って、定義は何なのかしら。」 「そうですね。端的に言えば、わたしに攻撃することでしょうか。」 涼子はニヤリと、 「ということは、喜緑さん的には、あなたに危害を加えようとしない限り、積極的に強制有機情報連結解除を実行する要件を満たさないと解釈して差し支えないかしら。」 「定義から言うと、そのように解釈して差し支えありません。」 「じゃあさ、例えばの話だけど。ここでわたしが、何か突拍子もないことを始めても、喜緑さんに攻撃しない限り、あなたはそれを邪魔する理由はないということで良いわね?」 「恐らくその場合は、変更命令が下されて、何らかの行動を起こすことになるでしょう。しかし、それでも行動開始までには少し時間が掛かるでしょうけれど。」 「……なるほど。予想通りの回答ありがとう。」 「どういたしまして。」 二人は、何かを確認し合うかのように視線を交わらせた。 「後はよろしく。じゃあね。」 涼子は欄干から一歩踏み出した。 真っ暗な水面目掛けて落ちていく涼子。江美里は動かない。わたしが何とかしなければ。 ……何とか? 一体何をしようというのか。 たとえここで涼子を上に引き上げたとしても、彼女の有機情報連結解除は既定事項。時期が早いか遅いかだけの違いしかない。それでもわたしは何かをしようというのか。何を? 分からない。皆目分からない。 その時、江美里が動いた。 「強制コード受領。 Auto-execution Mode... KILL /ALL SELECT シリアルコード FROM データベース WHERE コードデータ ORDER BY 攻性情報戦闘 HAVING ターミネートモード パーソナルネーム朝倉涼子を反乱分子と判定。当該対象の有機情報連結を解除する。」 『物騒な』コマンドラインスイッチと共に、江美里の口から有機情報連結解除のコードが紡がれる。 その時わたしは、違和感を覚えた。なぜ情報統合思念体は、涼子をここまで目の敵にするのだろうか。所詮は涼子も、情報統合思念体にとっては一端末に過ぎないはず。それはもちろんわたしにも、江美里にも言えること。なのになぜ、涼子だけをこうも執拗に付け狙うのだろうか。 涼子がまた独断専行しようとしていたから? そのような些事、捨て置けば良いはず。たかが一端末に、何ができると言うのか。 確かにわたしは、一端末でありながら、一度は情報統合思念体を消滅させた。でもそれはハルヒの能力を掠め取って利用しただけ。わたし自身の能力ではない。情報統合思念体との接続を断絶してしまえば、たちまち端末は無力化する。なのに、なぜ。 一端末に過ぎないわたしには、情報統合思念体の考えがすべて分かるわけではない。ないが。違和感が拭い去れない。何かが引っ掛かる。 接続を断絶できない理由があった? 断絶して困ること……端末の動向を把握できない? 確かにそう。それはもはや『端末』ではない。……まさか。 涼子が端末でなくなることが困る? 涼子の『変容』を恐れている? ……恐れる? 情報統合思念体が? 一端末を? ありえない。ナンセンス。 「朝倉涼子の有機情報連結の解除を確認。効果空間内、残存反応なし。」 江美里の声が響く。わたしは黙って、暗い水面を見つめていた。そこには何の痕跡も残ってはいなかった。水音こそしたものの、何も浮かんではこない。有機情報連結が解除され、何も残らないのだから当然。 「Mode Release...」 江美里が通常動作に復帰した。 「こういう時、人間は……やはりこうするのでしょうね。」 わたしの後ろに回ると、肩に手を置いた。 「わたしの胸で泣いても良いんですよ?」 そう言って優しく……とても優しく抱き締めてきた。 「わたしにそのような趣味はない。昨夜は状況に流されただけ。勘違いしないで。」 「嘘ばっかり。」 江美里は後ろからわたしの顔に頬を寄せた。 「わたしの頬に感じる、この熱くて冷たい水は何でしょうか。」 それは水じゃなくて、もっと寂しい粒。 「泣いてない。泣いてなどいない。」 「はいはい。」 よしよし、と頭を撫でられる。この感触、嫌いではない。 「わたしも長門さんと同じになりましたね。この手で、同胞である朝倉涼子を……」 江美里がわたしの耳元で囁く。 「でも心配はしてません。あなたも受け取ったのでしょう? 彼女の最期のメッセージを。」 有機情報連結が解除される瞬間、涼子からの通信。 『ここから、わたしの抵抗が始まるの……』 謎の言葉を残して、朝倉涼子は消滅した。 ←Report.19|目次|Report.21→
https://w.atwiki.jp/stalker_soc/pages/82.html
Priboi Story MODとは Priboi Story MODはハンガリーのファンの有志によって製作された既存のストーリーラインを殆どをオリジナルストーリーに書き換え、 探索を主眼に置いた大型MODである。 舞台はShadow of Chernobylの数年後、Marked OneがZONEの真実を見出した旅の後。 プレイヤーはMilitary所属のPriboi中尉となり、ZONEで蠢く忌まわしい過去を垣間見る事となる。 Priboi Story攻略 Priboi Story MODのクエストアイテムと一部のミッション目標の場所一覧。 ネタバレなので、どうしてもと言う時か詰まった時以外見ないこと。初回で見ると面白さを大きく減じる恐れ有り。 探索のコツ 室内の一部を除き、書類などは暗視ゴーグル(紫色じゃない方が良い)で覗くとアイテムが明るく浮かび上がって見やすい。(Ver1.1では基本的にStashに入っている) 拾った資料とかをよく読んでとにかく根気で虱潰しに探す。ロードローラ式に。パスワードはPDAの百科事典を見て確認する。 フォーラムで制作者曰く稀に小さいオブジェクト付近で死ぬと消えるバグがあるらしい、セーブはしっかり。 取得条件を満たしているにもかかわらずバグによりマップ上にアイテムが見当たらない場合は、別エリアから戻ってきてオードセーブを行うと復活すると思われます。 なおDocumentの取得は後々とるものでも先に取っておけば取得条件を満たすと同時にタスククリアとなります。 一部ドキュメントに取得条件を満たさないとマップ上に出てこないものがあると思われます。 ↓(以下ネタバレ 【Flash Drives】 Doc's Flash Drive X18 の地下一階にあるくぼんだ床が放射線地帯の隣にある実験機械の側。小さいので見落としやすい ※Ver1.1 一階から階段を下りたら左手をずっと進み行き止まりの短い階段を下りたところにある青箱の中 Military Agent Flash DriveGarbage の駅の反対側にあるトンネル内の死体 Siro's Flash Drive Army Warehouse の基地の近くの沼の廃屋に居る気が狂った Freedom 兵 Siro が所持 Scientist's Flash Drive Red Forest のヘリ捜索ミッションで最終目標の科学者の死体 Strelok's Flash Drive Pripyat の西の端にあるマンションの3F。1F焚き火付近の階段が見つけにくいので注意 【Cases】 Convoy Report Army Warehouses の Red Forest 境界に近いヘリ墜落地点付近の死体 UHSF Documents #2 Agroprom 研究所の3階の棚の中 【Other Items】 Dezik's Key Army Warehouse の基地の Strelok が所持 Dezik Lohnar's PDA Army Warehouse の基地の Freedom の Dezik が所持 ※Ver1.1 19750208 へ変更 PDA P4a Sensor X16 の Brain scorcher の底、科学者の死体の近く(最高性能のAnomaly探知機としても機能する) ※Ver1.1 アクセスコードが022138に変更 Some Device (Decoder) X18 の火のポルターガイストが出る部屋にあるコンピュータ室の机の上 X-virus Anti Dote Dark Valley の Bandit の巣窟にある 地下牢が有る建物の中庭の通気口の溝。X18 の最下層の小部屋の冷蔵庫の中。Barkeep から買う事とも可能 X-virus Anti Dote(※Ver1.1) Dark Valley の Bandit の巣窟にある1階のアイテム貯蔵庫(ウォッカが沢山ある部屋)の青箱の中。X18 の最下層の小部屋の冷蔵庫の中。Yanterの教授から買うことも可能 【Documents】 CNPP Blue Print Duty 基地の検問の近くにある倉庫内 Dead City Documents #1 Dark Valley の廃工場の Borov の部屋 Dead City Documents #2 X18 の地下研究所内の出入口近くに転がってる死体の奥 Documents from the Hotel in Pripyat NPP の最奥部 Monolith の動力部の手前の部屋 Documents from Lab X16 NPP の炉心内部で Monolith へ来るの途中の瓦礫の下、X18 Lab Code #1の近く Ghost's Memo from 2009 Army Warehouse の村の南西の家の地下室。地下室の出入りに爆発物の樽と木の板が被せられている KGB Secret F29 Army Warehouse の基地の Freedom の武器庫内 Letter from Sidorovich 1 Cordon の Trader Sidorovich の店の中 ※Ver1.1 Sidorovichの店内にある箱の中(実質、一番最初にとる) Letter from Sidorovich 2 Agrogprom 地下の Strelok の隠れ家 Mutations Report #1 Dark Valley の養豚所跡地の道路反対側にある Bandit の貯まり場の廃屋 Mutations Report #2 Agroprom の廃工場の室内、放射線が出てる窪地の反対側の木箱の影 Mutations Report #3 X18 の火のポルターガイストが出る部屋からアイテムの入った棚が並んでる通路の奥 NPP Accident #1 Agroprom の鉄道トンネル内 NPP Accident #2 X10 の送信施設内の奥にある送信機のスイッチがある方のサイロの底 NPP Accident #3 Pripyat 市内の西、近くにヘリが墜落している内部が高放射線地帯の建物の階段の下 ※Ver1.1 Pripyat D 7付近 Monolith基地(お祈りオブジェクトがある地下)の青箱(本棚の中じゃない方) Prof. Kuruglov Genetics Dark Valley の廃工場にある Borov の部屋がある建物の3階の高放射線地帯の部屋の中。車庫との連絡通路から木箱が鉄の取っ手に乗っているのが見えるだろう。屋上からそれを足場に部屋に入るしか方法はない 木箱を壊しても取ることは可能 Sidorovich Memo Army Warehouse の焚き火に近い村の家の地下室。拾うと X-virus に感染するので X-virus Anti Dote を手に入れる必要がある UHSF Accident Report X10 の扉にパスが掛かった弾薬と治療キットがある小部屋。 UHSF Documents #1 Pripyat の西にある地下駐車場の手前にある2棟あるビルの奥の棟2階 ※Ver1.1 地下駐車場を抜けてマップ右側の正方形のビル(MAP/Pripyat のI-7)の1階より侵入、3階に上がって下に止まっているエレベーターに飛び乗り、おいてあるリュックサックの中。1F焚き火付近の階段が見つけにくいので注意 X18 Lab Code #1 NPP 炉心内部で 本編でMonolith があった場所 ※1.1 NPP内部、最初のガウスGUN兵を倒し、その後正規ルートに進まずにパイプだらけの部屋(部屋の前に2人のモノリス兵がいる)へ行くと、その部屋の地下へ続く梯子があるので、そこを下った先の部屋 X18 Lab Code #2 Red Forest の Rader へ向かう坂の手前、狙撃兵が居るロックのかかったシェルター 【Mission Object(non item)】 UA-DZ32 Squad Location NPP の野外MAP南西の壁際に陣地がある。RPGやフル装備のAN-94(デフォルトでは入手不可能)等が置いてある Extraciton Point(脱出地点) NPP の野外MAP北西にホバリングしているヘリが止まっているゲートがある Documentを取る時系列編 01.CNPP Blue Print Bar:Duty基地の横、倉庫内の奥、右隅 Letter from Sidorovich Bar Bar:トレーダーBarKeep?の店内 カウンター奥の部屋 ※Ver1.1 Sidorovichの店内にある箱の中(実質、一番最初にとる) 02.UHSF Documents #2 Agroprom:研究所軍基地の最上階の棚の中 03.Dead City Documents #2 X18:の地下研究所内の入口に近い場所にある死体の奥 04.UHSF Documents #1 Pripyat:地下駐車場右下のにある建物二階奥の部屋 ※Ver1.1 地下駐車場を抜けてマップ右側の縦に長いビルの1階より侵入、3階に上がって下に止まっているエレベーターに飛び乗り、おいてあるリュックサックの中 05.Mutations Report #1 DarkValley?の養豚所の跡地の道路反対側にあるBanditの貯まり場の廃屋 06.Siro's Flash Drive ArmyWareHouse?横:気が狂ったFreedom兵(Siro)が所持 07.NPP Accident #1 Agroprom:トンネル内 08.KGB Secret F24 ArmyWareHouse?:Freedomの武器庫内 09.NPP Accident #3 Pripyat:西の広いエントランスのある建物(図書館?)、奥の階段の下。青箱のところ ※Ver1.1 MAP/Pripyat D 7付近 Monolith基地(お祈りオブジェクトがある地下)の青箱(本棚の中じゃない方) 10.Dezik Lohnar's PDA ArmyWareHouse?:FreedomリーダーDezikが所持(X10のアクセスコードが記載されている:4615) ※Ver1.1 19750208 へ変更 Freedomのメンバーが見つからない場合ははPripyatまで遠征しているかもしれない。万が一、地下駐車場手前の二階建てビルの壊れた階段側に出現していたら手榴弾で手前に弾き出そう 11.NPP Accident #2 X10:奥の広めの縦穴の底 12.X18 Lab Code #1 Agroprom:地下のStrelokの隠れ家 13.Dead City Documents #1 DarkValley?:廃工場、Banditのリーダーのオフィス内 14.Dezik's Key ArmyWareHouse?:Freedomの中にいるStrelokが所持 15.PDA P4a Sensor X16:コントロール装置の下、Scientistの死体の近く(X10のアクセスコードが記載されている:831220 最高性能のAnomaly探知機としても機能) ※Ver1.1 アクセスコードが022138に変更 16.UHSF Accident Report X10:下の階のコードの必要な扉 17.Doc's Flash Drive X18:ボイラーのある部屋の隅。Dead City Documents #2のあったひとつ下の階 ※Ver1.1 一階から階段を下りたら左手をずっと進み行き止まりの短い階段を下りたところにある青箱の中 18.Strelok's Flash Drive Pripyat:西の端にあるマンション三階の部屋の中。 19.Genetic Book DarkValley?:廃工場北側の三階。窓から侵入車庫連絡通路から金属取っ手に乗っている木箱に跳び移って入る(Red Forest坂の渡り廊下の扉のアクセスコードが記載されている:5797812) ※Ver1.1 アクセスコードが78159736に変更(Encyclepediaには78159738と記述されているが間違い?) FIX2 にてEncyclepedia の記述が修正済み 20.X18 Lab Code #2 RedForest?:坂の渡り廊下の端に梯子を上ってあがったところ。近くに科学者の遺体。 21.Ghost's Memo from 2009 ArmyWareHouse?:サっちゃんの村ドラム缶の下の地下室(Sidorovich Memoとは違う場所なので注意) 22.Mutations Report #2 Agroprom:研究所の一階ガス缶の横 ※1.1 pripyat南東、地下駐車場手前の二階建てビル奥側、階段を上がって二階のStashの中 23.Sidorovich Memo ArmyWarehouses?:サっちゃん村の小道を挟んで東側の家の地下室板で封鎖されているため爆風で吹き飛ばす(!:X-virus Antidote要) UA-DZ32 Squad NPP:南西辺りに拠点そばにBinocularが落ちているので売ってしまった、捨ててしまった人は回収が可能 24.X18 Lab Access Code CNPP:原子炉モノリスのあったところ(X18のアクセスコードが記載されている:36321) ※1.1 NPP内部、最初のガウスGUN兵を倒し、その後正規ルートに進まずにパイプだらけの部屋(部屋の前に2人のモノリス兵がいる)へ行くと、その部屋の地下へ続く梯子があるので、そこを下った先の部屋 アクセスコードが18746に変更 25.Documents from Lab X16 CNPP:原子炉モノリスへ降りていく坂の前。瓦礫の下 26.Mutations Report #3 X18:動力室。アクセスコード36321(X18 Lab Code #2にて入手) (!:X-virus Antidote要) 27.Decorder X18:制御室のデスクの上 ※1.1 スロープを登って行く部屋にあある。 28.Documents from the Hotel CNPP:真ENDルートの最奥部手前サーバールーム入ってすぐ右の高くなっているところ ※1.1 サーバールーム右の高くなっているところから見て、自分に近い方の列の奥のサーバー機の裏にある箱内。 エンディング NPP外周マップ北東を目指す。門のところにヘリコプターがホバリングしているので接近するとエンディングへ マップ別アドバイス Cordon ゲームが始まった直後はナイフぐらいしか持っていないので軍基地の装備をいただいておこう。本編と同じようにAK74UとPM、屋根裏に弾薬や謎のスーツがある。役に立ちそうにはないので換金しておけば医薬品やAN-94等を買う足しになる。 ルーキーキャンプにつくと地下室のある民家に支給品の拳銃・医療品・食料が入ったケースがあるので忘れずとる。 ルーキーキャンプ近くにいるMercsはAK74を持っているので、状態が良ければ貰っておこう。 Foxがいた辺りの近くにスコープ付きAK74を持ったMercsが出現する可能性あり。遭遇したらしっかり頂いておこう。 アノーマリー検知器はタダで手に入るので買わないように。 Ver'1.1ではStalker村の屋根裏のMercスーツが手に入らない場合がある。その場合はBar以降までまともなスーツが手に入らないので戦闘はなるべく控えよう。 Garbage アノーマリーが見えず、放射能汚染が始まっても音が出ないので状態には気をつけること。 オブジェクトが多数追加されているので若干重い。 DarkValley?方面からBanditが大量にやってくることがある。 Agroprom Mercs制圧任務はマップ全体のMercsが対象なので、手前の建物から掃討したほうが後々楽。 Mercs増援は5.56mm弾を使う高性能な銃を装備しているが、手に入る弾薬が少ないので5.45mm弾をメインに使ったほうがいいだろう。 Mercsの将軍を殺害する任務は建物の裏の丘から4階にいるMercsの兵士を狙撃すると良い。見つけにくい場合は夜を待って侵入するか、ヘッドランプを頼りに狙撃してしまうと良い ※ver1.1は外骨格スーツを着てる兵士が基地の敷地内を巡回している DarkValley 地下2階の扉を開けると致死性ウィルスに感染する。早くワクチンを見付けなければならない 地下研究所には異常に耐久力の高いGhostZombie?が出現する Yantar フィールドは草木が生えていて視界が悪くスノークが突然飛び出すこともある。ストーカーキャンプに逃げてしまうのも手 Army WareHouse 初回時はキマイラが村付近に居るが見つかるととんでもない速さで追ってくる。高台でやり過ごすか、狙撃するかした方が良い BlowOut?が起きるとミュータントの大名行列がBar方面から大挙してやってくる RedForest?へ続く道に近づくとMonolithが大量に現れる。掃除してもすぐに沸いてくるので無視した方が賢明 BloodSucker?が廃村から居なくなるとContlloerが給水塔付近の民家に沸くようになる。 Redforest Chernobyl NPP方面から戻る際、移動ポイント近辺にMonolith兵が沸いていていきなり銃撃される恐れあり。体力を事前に回復しておくべし。 森の中には大量のゾンビとBloodSucker?と幻覚Pesudogが居るので、回復アイテムは十分に持ち慎重に進む事。 Pripyat 大量のモノリス兵とミュータントが町に居る。特にControllerとそれに従うZombieの集団がアイテム探索に厄介。しぶとくて銃ではなかなか倒れないが爆発物では… 次点で脅威なのがDwarf。すばしっこく遠距離では念力で物をとばし、近距離では怪力で攻撃してくるので狙撃か爆発物で対処しよう。 本編では通過点だがこのMODでは全域が探索地域。諦めずに隅から隅まで探すのだ スタジアム内はグラウンドがアノマリー地帯になっていて、観客席にはRPGを構えたモノリスが陣取っていて非常に危険だ。狙撃銃が欲しい所である。 CNPP 本編ほどではないが相変わらずモノリス兵が沢山いる。 特に野外のCNPP入り口側にはChimairaやDwarf,Pesudog Ginatと言った危険なモンスターが徘徊しているが、モノリスとは仲が悪いので同士討ちを狙ったり迂回してスルーするべきである 出口側ではMonolith兵に加えZombie(非武装)も徘徊している
https://w.atwiki.jp/reportdesigner/pages/35.html
#blognavi Report Designer Ver5.00170がリリースされました。 Ver5.00170で追加・拡張された機能は下記の通りです。 RD Editor のユーザー・インターフェースの拡張 - マウス操作 RD Editor のユーザー・インターフェースの拡張 - ラベル文書形式 新規関数 DrawBar 要約関数の追加 新規関数 mergecellex2 要約関数の追加 Vista OS での OCX コントロールの機能拡張 詳細内容、および改修された内容については、リリースノート5.00170をご参照ください。 →リリースノートのダウンロード カテゴリ [お知らせ] - trackback- 2009年12月28日 15 35 09 #blognavi
https://w.atwiki.jp/thesimssocial/pages/121.html
名称 Giant Book of Riddles 費用 Lv 39 SimCash 設置材料 - Drop ?
https://w.atwiki.jp/reportdesigner/pages/79.html
#blognavi 質問 新規にフォームレイアウトを定義するのは手間なので、 既にあるEXCEL等の帳票から取り込むことはできませんか? 回答 テキストや線、画像の取り込みは可能です。 一旦、XPS形式で出力してもらい、それをReport Designerのフォーム上に オブジェクトとして変換・インポートする機能があります。 ※次のバージョンから製品に実装される予定です。 カテゴリ [FAQ] - trackback- 2010年11月19日 18 43 41 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/ce00582/pages/5875.html
var a=new Array(); var b=new Array(); var c=new Array(); var d=new Array(); var number; function sample() { var query = "SELECT title,pic FROM " + 1zOd16Ci4kEM9v2VKl6Gk9lX_yvoQ7rPYIEYHNX4 ; var encodedQuery = encodeURIComponent(query); var url = [ https //www.googleapis.com/fusiontables/v1/query ]; url.push( ?sql= + encodedQuery); url.push( key=AIzaSyAH0WCAXRIdHdbI-6bnMSN4kVDDZZmGyqY ); url.push( callback=? ); sx=0; $.ajax({ url url.join( ), dataType jsonp , success function (data) { var rows = data[ rows ]; var str2; for (var i in rows) { sx=sx+1; a[sx]= rows[i][0]; b[sx]= rows[i][1]; } number=sx; table(); } }); }
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2289.html
Report.18 長門有希の憂鬱 その7 ~朝比奈みくるの報告(後編)~ あたしの照準でたらめな『みくるビーム』は、それでも開戦を告げる合図にはなったようです。 あたしが視線を巡らせた辺りには、焦げ目の付いた人型が多数現れました。……自分で撃っといて何ですけど、すごい威力です。こんなものを無意識に撃てるよう改造しちゃうんだから、やっぱり涼宮さんはすごいとしか言いようがないです。 空中では、古泉くんの赤い軌跡が幾つもの緑色の軌跡と激しくぶつかり合っていました。あまりにも速過ぎて、目で追うのは無理です。 敵航空戦力はとりあえず古泉くんにまかせることとし、あたし達地上部隊は敵地上戦力を叩くことに集中します。戦法は、あたしと喜緑さんの砲撃で姿を表した近距離の敵を、キョンくんが短機関銃のフルオート射撃で片っ端から倒すだけ。単純明快です。 「弾切れせえへん銃って、ゲームに出てくる隠し武器みたいやな……」 【弾切れしない銃って、ゲームに出てくる隠し武器みたいだよな……】 キョンくんのそんな呟きが聞こえてきました。確かに、こんなでたらめな戦い、ゲームみたいと言わざるを得ません。 「あなたがゲームのようだと認識するのは仕方がありません。もっともなことだと思います。」 喜緑さんがキョンくんの呟きを聞き付けて、静かに、でもはっきりと言いました。 「でも忘れないでください。これはゲームという仮想現実ではなく、れっきとした現実であるということを。」 そう言って喜緑さんはキョンくんに手をかざし、 「真空呪文(バギ)。」 キョンくんの身体を旋風(つむじかぜ)が包みました。 「おわっ!? つっ、痛たたたた……」 キョンくんの着ている服の袖があちこち裂け、所々出血しています。 「まるで現実ではないことのように思えるかもしれませんが、実際はこの通り、痛みもあれば出血もします。大きな損害を受ければ、生命活動が停止するでしょう。これは紛れもなく現実なのです。」 どんなにでたらめな出来事でも、今目の前で起こっているのはすべて現実の出来事。だから……舐めて掛かるな、ということですよね。 「そういうことです。その傷の痛みが、現実に引き戻すきっかけになれば良いのですが。」 「分かりました。俺なら大丈夫です。だから……」 キョンくんは短機関銃を撃ちながら叫びました。 「今は、目の前の敵を倒すことに集中します!」 地上戦力の殲滅は、順調に進捗しています。大火力を持った戦力が三人もいますからね。問題なのは航空戦力です。古泉くん自身の能力の問題じゃなくて、単純に人手不足です。それにどちらかというと古泉くんの能力は一対一用で、あたし達みたいな範囲攻撃用じゃなさそう。 というわけで、手が回りきらない敵航空戦力が、時折あたし達のところに飛来します。 「五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)。」 慌てず騒がず喜緑さんは、大技で仕留めます。技名の由来は……ある少年漫画でしょうね。もしかしたら喜緑さんは、長門さんがいつも分厚い本を読むように、普段は静かに漫画を読んでるのかもしれません(今度、長門さんに漫画を貸してみようかな)。 一方あたしはというと、対空防御は喜緑さんに任せて、地上・上空の区別なく、ひたすら辺り一面を色々な兵器で薙ぎ払っています。目的は、隠れている敵に印を付け、目視できるようにするため。目視できる状態になれば、それはキョンくんの標的になります。 こうしている間にも、前から後ろから、もうすべての方向から、鉄筋の射撃を受けています。それらはすべて、喜緑さんの防護壁で防がれてますけど、やっぱり生きた心地がしません。 ふと上を見ると、上空で古泉くんが多数の航空戦力に取り囲まれていました。援護しなくちゃ。でも、あまりに動きが速く、また標的も敵味方入り混じってるので、おいそれと撃てません。間違って古泉くんを撃ってしまったら、それこそシャレになりませんし。混戦中の援護射撃は無理かも。 「キョンくん、出番ですよ。」 喜緑さんがそう告げると、キョンくんの端末が変形しました。 「うわっ!? 何(なん)やこれ!?」 【うわっ!? 何(なん)じゃこりゃ!?】 「狙撃形態。PSG-1の外観を模しています。」 PSG-1……この時間平面で使用されているセミオートマチック式狙撃銃で、ある事件をきっかけに開発され、それまでボルトアクション方式しかなかった狙撃専用銃に新たな歴史を開いた、と史料にあります。 「照準はすべてその端末が制御します。迷わず敵を狙撃してください。」 キョンくんは銃口を空に向けました。 「行くぞぉぉぉ古泉ぃぃぃ! 気ぃ付けろぉぉぉ!!」 【行くぞぉぉぉ古泉ぃぃぃ! 気を付けろぉぉぉ!!】 キョンくんの雄叫びと数十発の銃声。そして上空の赤い光を取り囲む緑の光のうち、赤い光に向かって動き始めていた数十個の緑の光が消滅しました。援護射撃成功です。 ちなみに、キョンくんが相手していた地上戦力は、代わりにあたしが相手しておきました(お嫁に行けるか、ちょっと心配になってきました)。 「どうやらこの空間は、要となる敵を倒すごとに、段階的に変化するようです。そして、すべての段階を越さないと、脱出が不可能なようですね。」 喜緑さんは、長門さん達と交信しているようです。 「一体一体倒していくのは効率が悪いですね……」 少し思案顔で喜緑さんは呟きます。『効率』……ちょっと嫌な予感がしました。 「古泉くん。空中の敵をすべて引き付けて、こちらに来てください。まとめて処理します。」 喜緑さんが上空の古泉くんに指示を出しました。まとめて処理? 指示に答えて、上空の赤い光がめちゃくちゃな動きを始めました。その動きに釣られて、緑の光がだんだん狭い範囲に集まり始めました。そして赤い光が、一直線にこちらを目指して飛んできます。その赤い光を追って緑の光もまた…… 「ひえええ!?」 「のあああ!?」 あたしの悲鳴と、再び短機関銃形態になった端末を撃っていたキョンくんの悲鳴が重なりました。空を埋め尽くす、ものすごい数の緑の光点……あまりに多すぎて、もはや光の帯にしか見えません。 あっ、ダメですよキョンくん、上空に向けて撃っちゃ! 古泉くんに中っちゃうし、地上の敵が! 「おわっ、す、すいません。思わず取り乱してしまいました……」 そんなあたし達のやり取りはどこ吹く風で、喜緑さんは上空を見ています。……広げた両手に、吸い寄せられるように何かが集まって光を放っていました。 「ふふふ。さあ、古泉くん……上手くかわしてくださいね……なるべく紙一重で……」 ひいいい、この人、何だかとっても楽しそうです! 誰か止めてください! 「喜緑さん、Hold your fire! って、無理!」 やっぱりキョンくんにも無理でしたね……逃げてー! 古泉くん、逃げてー! 「さあ、もう少し……行きますっ!」 喜緑さんが吼えます! って、あなたはこんなキャラでしたっけ!? 「極大爆裂呪文(イオナズン)!!」 喜緑さんの両手から放たれた光球は、お互いに逆位相の正弦波の軌跡を辿りながら、こちらに向かってくる赤い光の球の方向へ真っ直ぐ飛んで行きました。こ、古泉くん! 直撃、と思われた刹那、赤い光の球は異次元の加速を見せてかわしました。アフターバーナー!? 喜緑さんの放った光球はそのまま直進し、古泉くんを追ってこちらに向かってきた緑の光の帯に近付いて…… 大爆発の後、空には塵一つ残っていませんでした。 「今の攻撃で、敵航空戦力はすべて倒したようですよ。」 あたし達の防護壁の中に降り立った古泉くんは、涼しい顔で報告しました。 あのー、古泉くん? さっき思いっきり囮にされたと思うんですけど、その点についてはコメントなしですか。 「いやー、あれくらい、《神人》との戦いではよくあることですから。」 いつものスマイル。えっと、何て言うか……いえ、やめときます。 喜緑さんは、ええ、分かっていましたとも、とでも言っているかのような顔で、さらりと言いました。 「これで残りは地上戦力ですね。長門さんたちに連絡します。」 トロいといつも言われるあたしにも、はっきりと分かります。この人、とんでもない大技を使う気満々です。 「30秒後に、爆音と閃光が発生します。目を閉じて耳を塞いでください。」 そう言うと喜緑さんは、いつの間にかイヤープロテクターとサングラスを付け、呪文のようにコードを唱え始めました。耳を塞いでいるのに、なぜかはっきりと聞こえてきます。 「Lord of vermillion!!」 そして、瞼越しにもはっきりと分かりました。世界が強烈な光に包まれるのが。一瞬後に、激しい衝撃波と爆発音。防護壁でかなり減殺されてるんでしょうけど、それでも凄まじい余波です。ようやく余波が収まると、あたしは目を開けました…… ああ、大阪湾がきれいに見えます。遮る物も何もなく、はっきりと。遠くの影は淡路島でしょうね。 「あの、喜緑さん。何だか、とても視界が広くなってませんか? 気のせいか、見通しが良くなったような……」 これで空の色がおかしくなければ、とってもきれいな光景なんでしょう。陽光を反射してキラキラ光る海面が…… 「現実逃避はそのくらいにしてください。範囲はこの空間内に限定されますから、御心配なく。」 喜緑さんに、無理やり現実に連れ戻されました。えーと、目の前の光景を端的に表すと。 西宮市の壊滅。 いくら現実空間には影響がないとはいえ、やっぱり息を呑む光景です。史料で見た、この時間平面より少し前の時間にこの土地を襲った大地震の後のように、見渡す限り瓦礫が広がる廃墟になっています。 「呆けている場合ではありません。いよいよ大詰めです。」 喜緑さんがそう言うと同時に、あたし達に影が差します。上を見上げてびっくりしました。巨大な人型が、あたし達を見下ろしていたのです。 「飛翔呪文(トベルーラ)。」 あたし達はいつの間にか喜緑さんに掴まれ、目の前に広がる瓦礫の荒野に移動していました。さっきまで立っていたと思われる辺りには、巨大な人型の足と土煙が見えました。移動が遅れていたら、踏み潰されるところだったんですね。 「これは……《神人》のような……」 「……ラスボス?」 古泉くんとキョンくんの呟きです。 「もう周囲から射撃を受けることはありません。あとはただ、打ち倒すのみです。」 『ガンガンいこうぜ』なんですよね、喜緑さん。もう細かいことは後回しにします。今はただ…… 「《神人》退治の腕は伊達じゃないところをお見せしますよ。」 古泉くんは再び赤い光球に。 「やれやれ……早いとこ終わらせようや。」 【やれやれ……早いとこ終わらせようぜ。】 キョンくんは端末を変形させ。 「クーデターは失敗に終わるものですよ。」 喜緑さんは静かに弓を持ち。 「未来人が過去で命を落とすことは……最大の禁則事項ですっ!」 あたしは拳を固め。 「※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※」 人型が咆哮を上げて腕らしきものを振り上げ。 「Ready...」 皆がお互いに目配せし。 「Fight!!」 次の戦いが始まりました。 「シャープシューティング。」 喜緑さんの放った最初の矢は、不気味な音を立てます。鏑矢(かぶらや)って言うんでしたっけ。開戦を告げる合図です。 「ダブルストレイフィング。」 その後はひたすら二本ずつ矢を放っています。 キョンくんの端末は、今度は…… 「89式5.56mm小銃の形態を模した状態です。」 89式5.56mm小銃というのは、えっと……この時間平面におけるこの『日本』という国の軍隊、当時は軍隊とは呼んでいないんですけど、単に名前が軍隊じゃないだけの、れっきとした正規軍において制式採用されていた武器で、その他には警察の特殊急襲部隊や、海上保安庁の特殊警備隊に系列の銃が配備されていた、と史料にはあります。アサルトライフル(突撃銃)、って言うそうです。 その銃の三点制限点射で、正確に弾を当てていくキョンくん。あたしもライフルダートをガンガン撃ち込みます。今までの敵と違って、最初から姿が見えているので、最初から全力攻撃です。 地上からあたしたちが攻撃しているうちに古泉くんは上空に舞い上がり、人型の周囲を不規則に飛び回って翻弄します。……あの振り回されてる腕、危険だなぁ。 「腕を切り落としますっ! 古泉くん、合わせてくださぁい!」 あたしは叫ぶと、長門さん曰く『超振動性分子カッター』を人型の腕に巻き付けます。……さすがに硬いです。でもそこに、古泉くんが正確に合わせてくれました。 太くて長い腕が肩口から切り落とされました。切り落とされた腕は、落ちるそばから空気に溶けてしまいます。でも、次の瞬間には、 「なっ!? 腕が再生しよった!?」 【なっ!? 腕が再生しやがった!?】 キョンくんの驚愕した声。腕が元通りの形に、一瞬で再生されました。 上空で旋回しながら、古泉くんが言いました。 「これはこれは……《神人》には再生能力はありませんでしたから、これは僕にとっては未知の領域ですね。」 古泉くんはこんな状況でも落ち着いています。一体どれだけの修羅場を潜ったら、あんな境地に達するんでしょうか。 「さすがにほぼ最終段階ですから、一筋縄では行かないようです。一定以上の損害を受けると、修復されるようですね。」 それじゃあ、いずれは疲れ果てたあたし達が倒されるハメに……喜緑さん、どうすれば良いんですか。 「攻撃を一箇所に集めましょう。瞬間的にでも相手の再生能力を上回る損害を与えれば、わたしが再生阻害因子を埋め込めますから。」 その再生阻害因子を埋め込めば相手の再生は止まり、 「ダメージが溜まり続ける状態になる、と。」 「そうすれば、後はひたすら攻撃を撃ち込めば、倒せるってことやな。」 【そうすれば、後はひたすら攻撃を撃ち込めば、倒せるってことだな。】 「そういうことです。」 作戦は決まりました。後は実行するだけです。 キョンくんの端末がロケットランチャーに変形しました。 古泉くんは、しゃがみ込み……クラウチングスタートの構え。準備は整いました。 「竜破斬(ドラグスレイヴ)。」 「みくるビーム Ver.Max!」 二発の攻撃が撃ち込まれ、人型の胸に風穴が開きました。しかしすぐに再生が始まります。そこへキョンくんの撃った攻撃が直撃。穴が塞がろうとするのを食い止めます。 「突貫~! ふんもっふ!!」 そしてその穴をこじ開けるように、古泉くんが光球になって突っ込み、貫通しました。 「死の呪文(ザラキ)。」 再生阻害因子をそう解釈しますか。確かに、今の状況には合ってるかもしれませんけど。しかし、本当に某漫画が好きなんですね、喜緑さん…… そして再生が止ま……いえ、止まってません! やっぱりダメなんですかー!? 「いいえ、攻撃は効いています。作戦の変更はありません。続行します。」 確かに、言われてみれば再生したとはいえ、傷跡が残ってます。 「動きを封じて肉弾戦に持ち込むのが、一番確実なようです。」 動きを封じるということは…… 「脚を使えなくするというわけですね。」 古泉くんはそう言うと、今度は空中で動き回り、人型の視線を上に引き付けます。時折指らしき部分を切り落として、再生に掛かりっきりにさせています。上手いなぁ。 「足の付け根辺りを狙います。わたしは右、朝比奈さんは左をお願いします。」 喜緑さんは体の両側に開いた両手に色違いの光球を作っています。この色は……喜緑さんの意図を察知したあたしは、使用する兵器を選定します。 「げ……俺が真ん中ですか……男として生理的に嫌やなあ……」 【げ……俺が真ん中ですか……男として生理的に嫌だなあ……】 生理的に? 足の付け根の辺りで真ん中っていったら……あ、そうか、『人型』だから……!? 「ちょっと、キョンくん! お、女の子の前で変なこと言わないでくださいっ!」 思わず赤面しちゃいました。ダメダメ、集中しなくちゃ! やれやれと言った感じでキョンくんが照準を合わせ、引き金を引きました。 「食らえ、金的!」 喜緑さんの攻撃がそれに続きます。 「極大消滅呪文(メドローア)。」 その攻撃にあたしが合わせます。 「マイクロブラックホール、行きます!」 三つの攻撃を受け、上半身と下半身が分離しました。分離した下半身部分を、すかさず古泉くんが切り刻みます。 「氷系呪文(マヒャド)。」 切り刻まれ、喜緑さんの呪文で氷結した下半身部分は、古泉くんの突貫を受けて砕け散り、そのまま風に溶けて二度と再生することはありませんでした。 あたし達の、とても素人とは思えない息の合った攻撃(多分、喜緑さんの補助のおかげ)で、ついに敵の動きを封じることができました。上半身だけになった人型は、もうそんなに大きくもありません。 「さあ、朝比奈さん。思う存分暴れてくださいな。」 「ふえっ!?」 「あなたは近接格闘の方が得意そうですからね。」 それはあくまで護身用で、っていうかそれは禁則事項であって…… 「鎧化(アムド)。」 あたしの反論を意に介さず、喜緑さんはあたしに情報操作。あたしの身体は、見る間に装甲に包まれます。えっと、チャイナドレス風の服に、胸や肩、間接部分等にプロテクターが付いた、そう、コスプレ用衣装みたいな。 ちなみに、某漫画の某キャラのように、パンツ丸見えです。これって、見えても良いパンツなんですよね? そうですよね!? 「わたしも援護しますよ。」 そう言ってあたしにナックルダスターを投げて遣すと、喜緑さんは鞭を取り出しました。 「俺も、やっぱり突撃するんですか……」 見ると、キョンくんの端末は釘がいっぱい刺さったバットになっていました。 「……銃剣とか、せめて木刀や鉄パイプにはできんかったんですか?」 【……銃剣とか、せめて木刀や鉄パイプにはできなかったんですか?】 あんまり変わらないと思うんですけど。 「あっ、喜緑さん、俺の装甲を特攻服にせんでええですからね!」 【あっ、喜緑さん、俺の装甲を特攻服にしなくて良いですからね!】 ……喜緑さん、何でそんな残念そうな顔してるんですか。 「…………」 喜緑さんは長門さんばりの三点リーダの後、キョンくんにも装甲を施しました。無難に、ローラースケート用のプロテクターです。何だか、喜緑さんはちょっと不服そうです。 「……漢(おとこ)の突撃には、特服(とっぷく)が正装ではなかったのでしょうか……?」 喜緑さん、それ、多分『おとこ』の字が違ってます。背中に『夜露四苦(よろしく)』とか書いてある服を着るシーンは、漫……もとい、『資料』で見たことはありますけど、キョンくんにはあんまり似合わないと思います。 「物理的にジゴクに落ちるよぉぉぉぉ!!」 キョンくんの攻撃! 会心の一撃! 人型に100のダメージを与えた!! 現実逃避してる場合じゃないですね。大上段から振り下ろしたキョンくんの釘バットが唸ります。 続いて、古泉くんの攻撃。単に体当たりしてるんじゃなくて、手から伸びた棒状の光で斬っているようです。 そしてあたしの攻撃……って、どうすれば!? 「言ったはずです。あなたの格闘能力と連携できるように、制御方法を追加したと。」 言われて、あたしは意識の攻撃系統を組み替えました。何だか力がみなぎってくる感じです。人型のそばに駆け寄りました。この格好からして、素手での攻撃なんでしょうね。 えっと……右、ですか? 「いいえ。」 ひ……左? 「いいえ。」 り、両方ですかあああ? 「はい。」 もしかして、もしかして……オラオラですかーっ!? 「やれば分かります。」 右、左と連続して突くと、体の各部が、エコノミーラインをなぞって動くのが分かりました。 「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!」 こっちですかあああああ!! あたしは某一子相伝の暗殺拳伝承者の如く、ものすごい勢いで人型を殴っています。 「あたぁっ!」 肘で。 「あとうっ!」 脚で。 「おあたっ!」 拳で。 「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!」 両手で。 あたしは、快調に敵を粉砕していきます。……どうか、明日以降キョンくんがあたしを見る目が変わるというようなことがありませんように。 「準備ができました。これで終わりにしましょう。」 さっきから鞭を振るいながら、ひたすらコードを展開していた喜緑さんが、通常言語を発しました。 「皆さん、わたしの後ろに退避してください。」 今度は一体どんな大技を繰り出すのやら……でも、少しだけ、次はどんな技が来るのかと楽しみにしてる自分を発見しちゃいました。 喜緑さんをよく観察します。これから起こることを見逃さないために。 直立不動のまま、目を開けて、胸のところで静かに合掌しています。滑らかに両手を広げました。それと同時に、凄まじい威圧感……闘気が全身から立ち上ります。 広げた両手を頭上に高く掲げ、手を組みます。その両手に闘気が収束していきます。掌底部をくっつけたまま指側を開き……その形がまるで物語に出てくる竜のように見えます。 喜緑さん……やっぱり『アレ』を使うんですね。あなたの元ネタの傾向から言って。組んだ両手を力強く前に突き出して、 『竜闘気砲呪文(ドルオーラ)(!)』 あたしも唱和しました。だって、分かっちゃったんですから。 ふわぁぁ……実際に見ると派手ですねぇぇぇ…… 「朝比奈さん。『重ね当て』行きますよ。」 「ひゃいっ!?」 あああ、喜緑さん! あんまり人の頭の中いじらないでくださいぃぃ! あたしの中で攻撃系統が喜緑さんの手によって、強制的に組み替えられました。これって……あたしの目の前に巨大な赤紫の光る円形の模様、そう、『魔法陣』が現れます。 そしてそこに集中していく高エネルギー反応。光球ができてどんどん膨れ上がります。 喜緑さん! 漫画だけじゃなくて、深夜アニメにも手を出してたんですか!? これが深夜アニメだって分かるあたしも、あんまり人のこと言えませんけどっ! 色々な所からエネルギーをかき集めるように成長する、目の前の光球。 やっぱり……撃つんですね。ええ、撃ちますよ。撃ちますとも。『人間兵器』の名に賭けて……くすん。 『Starlight Breaker!』 喜緑さんの竜闘気砲呪文(ドルオーラ)に負けない、信じられないようなエネルギーの奔流が、人型に襲い掛かります。 『あなたのストレス解消にもなりましたね。』 わっ、わっ、それは禁則事項……って、これは直接通信? 通信ができるっていうことは、つまり。 やがてエネルギーの奔流が止むと、後には何もない空間が広がっていました。 「これで……終わったんですね、戦いが。そうですね? 喜緑さん。」 古泉くんが地に降り立ち言いました。喜緑さんは肯定しました。 「はい、終わりました。間もなく空間封鎖が解除され、通常空間へ復帰すると思われます。」 「ふー、やれやれ。」 キョンくんは、心底くたびれた、という表情でいつもの溜め息です。 キョンくんの端末と装甲、あたしのナックルダスターと装甲が、煌めく砂になって空気に溶けていきます。喜緑さんは、いつの間にか弓も鞭も、どこかへ直して(仕舞って)いました。 ところで喜緑さん。使い終わったから装甲が消えていったんだと思いますけど、何であたしの装甲は、プロテクターは消えたのにコスプレ衣装みたいな服装はそのままなんでしょうか? 「その答えは……」 喜緑さんは、言わずとも分かるだろうとでも言いたげな瞳で、 「……元町。」 はうっ!? なぜそれを!? この間、この時間平面でできたお友達の鶴屋さんと一緒に、神戸・元町の中華街へ遊びに行ったんです。その時に見た、売り子のお姉さんの衣装が可愛くて……確かに、その時、ちょっと、着てみたいな、とは思いましたけど。 「人間の言葉で言うと、似合ってますよ。」 あ、えっと、その……あ、ありがとうございます…… 何でだろう。 男の人にそう言われてドキドキするのなら分かるんですけど、人間ではないにしても、見た目は女の子である喜緑さんにそう言われて、それこそキョンくんにそう言われるよりもドキドキしてるなんて。 ここで、ちょっと実験。もし同じことを鶴屋さんに言われたとしたら? あたしは心の中で、いつも元気いっぱいの、鶴屋さんの言動を想像してみました。 『いっやー、みくる、めがっさ似合っとるっさー! 男と一緒に、あたしまで悩殺する気ぃにょろ?』 【いっやー、みくる、めがっさ似合ってるっさー! 男と一緒に、あたしまで悩殺する気にょろ?】 鶴屋さん、ウィンク。 はい、あたしノックアウト。 ………… 「おや、どうしましたか、朝比奈さん。そんなに落ち込んで。」 古泉くんが声を掛けてくれます。ごめんなさい。ちょっと、あたしの性癖について、本気で悩み始めてます…… 「何にしても、無事に戦闘が終結して、何よりですよ。」 そう言って笑う古泉くんに、キョンくんがしみじみと言いました。 「それがお前の素の言葉なんやな。」 【それがお前の素の言葉なんだな。】 古泉くんは、一瞬『しまった』という顔をした後、すぐにいつものスマイルに戻りました。冷や汗をかきながら。 「……あんさんが何を言いたいのかさっぱり分かりまへんなあ。」 【……あなたが何を言いたいのかさっぱり分かりませんね。】 「戻すな戻すな、バレバレやって。」 【戻すな戻すな、バレバレだって。】 即座にキョンくんのツッコミが入りました。 あ、そうか、これだったんだ。この戦いが始まったとき、あたしが古泉くんに感じていた違和感の正体は。話し方が変わっていたんですね。 「…………」 古泉くんは長門さん並に沈黙した後、頭を掻きながら言いました。 「いやはや。ばれてしまっては仕方がありませんね。」 「最初からバレとぉって。そんな不自然な喋り方する奴おらへんわ。」 【最初からバレてるって。そんな不自然な喋り方する奴いねえよ。】 「これも『謎の転校生』を演出する一環だったんですがね。」 「演出過剰やろ、あれは……」 【演出過剰だろ、あれは……】 「そうなんですか? お察しの通り、僕はこの土地の出身ではありません。だから、方言の違いは余りよく分かりませんでしたもので。」 「まあ、せやろな。色々と誤解された物(もん)の影響を受けた喋りやったし。」 【まあ、そうだろうな。色々と誤解された物の影響を受けた喋り方だったし。】 古泉くんは苦笑を浮かべながら、 「それでしたら、もっと早く指摘していただければよかったのに。」 「それはアレや、お前が明らかにツッコミ待ちやったから、ツッコんだら負けや思(おも)て、誰もツッコまへんかっただけやで、きっと。」 【それは、お前が明らかにツッコミ待ちだったから、ツッコんだら負けだと思って、誰もツッコまなかっただけだぜ、きっと。】 古泉くんは、やれやれと肩をすくめました。 ……あたしの言葉はどうなんだろう? 同じ国の言葉とはいえ、こんな昔の言葉……『古語』は、あたしにとってはほとんど外国語も同然ですから。 よく用法を間違えるし、発音も怪しいし。舌っ足らずで、いつもおろおろあたふたしてるってよく言われます。 ちなみに、これまでの調査結果によれば、この使用する言葉の違いによる会話の齟齬が、涼宮さんにとっては『萌え要素』と認識されているようです(って、これも禁則事項ですよね……長門さん、ここ、まずかったらカットしといてください。)。 【長門有希・注】 原文をそのまま使用した。 やがて、空に亀裂が走り、ステンドグラスが割れ落ちるように、空間封鎖が解除されました。空の残骸が街の廃墟に崩れ落ち、落下地点が通常空間の町並みに戻っていくという、普通とは逆と言うのか、何とも不思議な光景が見えました。壮観です。 「空間封鎖の解除、通常空間への復帰を確認。」 喜緑さんが、息をつきながら告げました。終わったみたいです。 でたらめで、激しい戦いでした。 喜緑さん。終わったんですから、また兵器の中和を…… 「そうですね。では、行きます。」 喜緑さんは、またあたしの顔を固定すると、だんだん顔を近づけてきて……首に腕を回して固定してるので、何だか情熱的な印象を受けるのは気のせいですよね、きっと。 喜緑さんの顔が耳に近付い「ふうっ」 「あひぃん!?」 な、何なんですかー!? 何で、み、み、耳に息を吹きかけるんですかー!? 「ひくっ!?」 は、鼻!? 鼻に噛み付き!? 「耳にするつもりだったんですが、何となく面白そうだったので、ちょっと戯れてみただけです。」 あたしは腰が抜けて、その場に尻餅をついちゃいました。 「それでは、長門さん達と合流しましょう。場所は文芸部室です。」 「……また、あの長い坂を上るんですか……ちょっと休憩さしてくれませんか?」 【……また、あの長い坂を上るんですか……ちょっと休憩させてくれませんか?】 キョンくんが心底疲れた声で言いました。喜緑さんは辺りを見回すと、 「大丈夫です。楽に移動しますから。一箇所に固まって、わたしに触れてください。」 古泉くんはいつもの顔で、キョンくんは怪訝そうな顔で、集まってきて喜緑さんの肩に手を置きました。へたり込んでるあたしの手を掴むと、喜緑さんは言いました。 「瞬間移動呪文(ルーラ)。」 ……ほんと、某漫画好きなんですね…… あたし達の身体は空高く舞い上がり、高速飛行して、あっという間に北高の屋上に着地しました。そこからは、歩いて部室まで移動します。三人の待つ、文芸部室へ。 余談ですけど、飛行中、喜緑さんのスカートの中がちらちら見えて……目のやり場に困りました。 え、どんなのだったかって? えと、この時間平面での言葉で言うと、その……グレーの、ハイレグ、Tバックでした。結構大胆ですよね……形の良いお尻が露に。 あ、思い出してたら、鼻血が……はうう。 長門さんへ 取り急ぎまとめました。 こういう形での報告は初めてなので勝手が分かりませんでしたが、こんな形で良いでしょうか? あたしの頭の中で考えていることをそのまま記録したものなので、読みにくい点は許してください。 ただ、そういうお願いだったので、あえてほとんど削除せずにそのまま書き出してますが、かなり恥ずかしいです。できれば適宜修正を加えてほしいんですけど。 以上、よろしくお願いします。 【長門有希・注】 人間の思考把握の一環として、立場の違う人間の視点からの報告を行うため、未来からの監視員である、朝比奈みくるに協力を要請した。最初は渋っていたが、何度かの交渉の末、協力を取り付けることに成功した。 涼宮ハルヒに関する直接的な観測記録及び考察は、全面的に禁則事項となるため開示は不可能とのことだったが、それ以外については『属人的な関係』をもって、『こっそり』見せてもらう事ができた。 そこで、ちょうどわたしの記録が欠落している部分の補完を行うべく、先の戦闘についての報告を依頼した。 喜緑江美里によるインターフェイスとしての報告とはまた違った、『人間』の視点で語られる貴重な情報であると思料される。 なお、最後の部分は人間の言葉で言う『私信』に相当する部分であるが、朝比奈みくるの思考そのままの情報と、外部に出すために整理された情報とで、内容の違いが際立っていたので、人間の思考の理解に資するため、原文をそのまま報告した。 ←Report.17|目次|Report.19→
https://w.atwiki.jp/ispnida/pages/37.html
Topsync OR2407W 807 名前:不明なデバイスさん[sage] 投稿日:2008/12/10(水) 21 35 35 ID Brvqb2Mr OR2407W簡易レポ 言語はハングル・英語のみ アス非は16:10or4 3 調整項目がコントラスト・ブライトネス・Color Adjust(RGB設定) ColorTempっていうのに3種類くらい登録済みの設定が有り。 後は、ガンマ・シャープネス位かな?いじれるの。 とりあえずドット抜けは無しで一安心。 台座は土台面積が大きめ。机揺らすと液晶もぐらぐらするねやっぱり。 これからまた、仕事いかなきゃなんでとりあえずここまでです。